ゆるやかな家具作り考
家具は、文字どおり、家の中の道具。
道具だから、日常生活の中で身近に頻繁に使うものなのに、今の無垢の木でできた家具はお値段が高すぎやしないか、ましてや、糊や塗装などを安全な材料で作ることをお願いしようものなら。
以上の家具の存在を否定するわけではない。いやむしろ家の中に、存在感のある広葉樹の一枚板のテーブルがほしいくらい。
しかし何十万円もするんだな、これが。
家の中全ての家具がそのようなものだったら、とてもじゃないが、お金がついてこない。きっと家族もついてこない。
やっぱり家の中の日常の道具なのだから、お手軽に手に入れることができないものだろうか。
そう言うなら、100円ショップ行けば、プラスティック製のものがあるじゃないか、と思うかもしれないが、いかにも無表情だし、心豊かな感じがしない。
何とか、家具の世界で「お手軽」と「心の豊かさ」を両立できないか。
前からそう思っていた。
しかし、今日はそうした世界に出会うことができた。
その世界の主は、日野でカフェをやっている山崎さん。
カフェを営みながら、その辺の雑木を使って自作で家具を作っている。
例えば椅子。
椅子って、その辺で拾ってきたような木で満足のいくものがまともに自分でできるんだろうか、と思うけれど、作り方を聞くとなんだか自分でもできそうである。
しかも、生木を使ってもいい、という。
全てがそうとは限らないが、生木は生木の使いようがあるとのこと。
これはさすがに軽いカルチャーショックを受けた。
家具の常識とは明らかに異なる世界だけど、しかし本当に自分の手でいろいろできそうな気がしてきた。
では、デザインはどうなんだ?やっぱり素人なりのものしかできないんじゃないの?と思うかもしれないが、いやいやこれがなかなかいいのだ。むしろ手が込まないから、素朴な風情のものができる。
確かにプロから見ればいい加減な作りかもしれない。
しかし、自分の生活を、自分たちの手で、身近にあるものを使って豊かにする術の一つとして、こうした家具の世界もあっていいと思う。
何もトラックや船に乗ってやってきた立派な銘木を使わなくても、その辺りの木だって生活を豊かにすることができるのだ。
実は、山崎さんの世界を里山に持ち込んで、里山を楽しむしかけの一つとして考えている。そうした目で里山を見れば、里山は資源の宝庫に変わる。
里山の維持・再生は、人との適切な関係、人の適切な手入れが不可欠である。
こうしたことが一つのきっかけとなって、再び里山と人との関係を取り戻すことができれば、と思う。