框だけタモ
改修工事の現場にて。
従来この家は、
玄関と居間が仕切られていない
一体の空間でした。
それはそれで
いい空間だったのですが、
玄関は吹き抜けているし、
やはり冬は都合が悪かろう、
ということで、
建具を仕込むことにしました。
入口は引き込みの
大きな硝子戸を入れ、
また欄間部分には
横長の回転硝子窓を取り付け、
全面的に通風を
確保できるようにしました。
ところで
引き込みの大きな硝子戸について、
下桟、上桟、中よりの縦框はスギですが、
戸当たり側の縦框のほうは
堅いタモを使い、
さらに幅約15㎜の溝を
上から下までしゃくって、
大人も子どもも、
建具が引きやすいように
なっています。
人の手によく触れるところなので、
堅木を使ったということもありますが、
これにはもう一つ
物語がありまして、
実は当初、
四周全てスギ材の建具を
予定していたのですが、
採寸の手違いで、
横幅に約24㎜短いものが
納品されました。
全て作り直せば
訳がなかったのですが、
一方で間に嵌め込む
高価な曇りの強化ガラスが
もうすでに
できあがっていました。
ガラスを足すわけにもいかず、
かといって
ガラスを無駄に
したくはなかったので、
戸当たり側の縦框を
24㎜太くすることにしました。
しかしそこだけ太くすることに
デザイン上違和感があったので、
まずは材をガラリと
代えてしまおうか、
という話になり、
さらに先ほどの
引手代わりのしゃくりを入れれば、
使い勝手がいいし、
さらに軽く見える、
ということで、
このような形に
なったわけです。
最初は寸法違いから
始まったことですが、
現場で職人と話し合うことにより、
かえって面白い感じになりました。
災い転じて―、ですね。
ところでタモという木、
今国産で手に入れるのは
なかなか難しくなってしまいましたが、
個人的に、
その名にたいへん
親近感を覚える木です(笑)