mと尺
数年前設計を進めていた仕事が
諸事情で一時中断していたのですが、
昨年末ありがたいことに復活し、
この春工事を始める予定となりました。
計画自体はほとんど変わらないのですが、
昔書いた図面を見返してみると、
柱の間は、
尺寸(3尺=909)で割りつけている一方、
柱等の部材寸法は、
例えば4寸が120、1寸3分が40と、
メートル単位の近似値で書いていました。
当時はそのようなルールで
図面を書いていたのです。
しかしいつの頃からか、
部材寸法も尺寸で書くようになり、
今となっては
頭と身体にその寸法感覚が
沁みついているので、
mと尺が混在する図面を見ると、
何かモゾモゾする感覚を覚えます。
見慣れれば大丈夫かな、
と思ったのですが、
いつまでもモゾモゾするので、
面倒ですが意を決して
図面を書き直すことにしました。
といってもCAD上では、
寸法がメートル単位で表記されますし、
またメートル単位で
行政手続きをしなければならないので、
4寸は121.2、1.3寸は39.39と、
全て30.3(=1寸)で割り切れるように
表記します。
余計面倒くさそう…、
と思いがちですが、
柱の間と部材寸法のルールが
統一されることにより、
部材を並べる際の
割算がしやすくなります。
あるいは、
寸法の検算が
しやすくなります。
例えば、
列柱を割り付けた結果、
どこかに608という数字が
出てきたとします。
しかしこの数字は、
尺=303で割り切れません。
ということは
どこかで2ずれている、
あるいは不均一なリズムが
構成されている、
と推測することが可能となります。
木組みが露わとなる
木造建築を美しく見せるために、
木組みのリズムをどう刻むか、
といったことが
いつも念頭にありますが、
それを考えるうえでは、
こうして間と部材の寸法体系が
統一されているほうが
何かと調子がいいのです。
何よりも尺寸法体系は、
身体を基準としたものだから、
慣れると使いやすいです。
手首から肘までの長さが、尺、
両手を広げた長さが、間=6尺
親指と人差し指を広げた長さが、
5寸(これは私の場合)
ですからね。
実際現場で
簡単にモノを測るとき、
たまに使ったりもします。
それともう一つ、
余談めいた話ですが、
1寸(=30.3)で割り切れる
メートル法上の表記は、
121.2だったり39.39だったり、
1818だったり15.15だったり、
数字の配列の
小気味いい場合が多いのです。
部材寸法を
例えば39.39の近似値40とかにすると、
その数字の配列の小気味よさが
必ず破綻します。
モゾモゾ感を感じるのは、
そのためでしょうか。
皆さん、
そんな目で図面の寸法を眺めていただくと、
別の楽しさがあるかもしれません。