梅雲の中一人佇む
作業した竹林の隣には、梅林が広がっていた。
ちょうど梅の花が美しい時期。
作業の間、虫のように梅林の中に引き寄せられる。
絵に描いたような青い空の下、梅の花の群れの中に入ると、梅の雲の中にいるようだ。
春の清々しい風が梅の雲を揺する。
気持ちいいなあ〜。
この梅林は観賞用ではなく、人間の営みとして梅を収穫するためのものである。
人間の生活の必要性の中で美しさというものは、美に下心がないからだろうか、何か安らぎを覚える。
コーポラティブ住民によるパーマカルチャー講座も6回目。
今日のお題は、「動物を飼おう!」
ニワトリ、ヤギ、ブタ、アヒルやカモ、ミツバチ…、実際に取り組んでいることを踏まえて、動物を飼うことの意味と方法論について、岩手の酒匂徹さんに話をいただいた。
動物でも植物でも、彼らの世話をするということは、よく相手を観察し、自然の法則と相手の特徴を感じ取ることが必要であることを感じた。
立ち止まってじっくりと相手を眺める時間。
その間、ボクらは相手を思いやる。
周りに多くの「命」があるということは、それだけボクらはやさしくなれる。
砂漠に緑と動物を。
遠回りかもしれないが、それが戦争を防ぐ有効な方法だったりして。
世話をするということは、もしかしたら‘世’界との対‘話’に通じるのかもしれない。
コーポラティブハウスの外壁に焼杉板を貼るため、住民の皆さんと一緒に焼杉作業を行った。
今日はその1回目。
合計約2,700枚の板を、自分たちで焼こうという、壮大な計画の始まりだ。
初めてということもあってたくさんの方々に来ていただいた。
ついでにI邸のIさんも、玄関扉用の板を焼くために参上!
25人はいただろうか、たくさんの人がいたこともあって、和気あいあい、楽しく作業ができた。
これから約30回、この快楽を楽しむことができる。
そう、けんちくを作るということは快楽なのだ。
住まいを作るにはやはり数千万円かかる。
だから、その過程で数千万円に相当する苦労もあるけれど、数千万円に相当する、いやお金に換えがたい快楽を得ようではありませんか。
五・七・十は、I邸の構造材の秘密。
I邸の構造材の材種は、スギとクリのみ。
そして、「幸せ柱」の尺三寸角以外、断面形状は、
・五寸角(スギ・クリ)
・七寸角(スギ・クリ)
・尺×7寸の平角(スギ)
の三種類のみである。
今度そんな目で、I邸の構造体を眺めてください。
設計作業も中盤に差しかかった頃、材木屋からこの提案があったとき正直頭を抱えた。
「イタリアンレストラン」だから、伝統構法とはいえどちらかというと線を細く作りたかったからだ。
しかし「たてものや」は、こうしたお題を結果的に楽しむ要素として消化していきたいと思っている。
限られた条件の中で、いかに自分が追求する空間を作るか。
これらの条件は、材の大きさに限らず、生活上の要請であったり、予算であったりするわけだが、「たてもの」という具体物を作るために様々な条件があるのは必然のことであって、それを豊かな空間として仕立てあげることが私たち「たてものや」の使命である。
また、この材の大きさのお題の趣旨を材木屋に深く聞いたわけではないけれど、おそらく山側の事情でもあるのであろう。
たてものがいろいろな要素のうえに成立する中で、お題や条件というのは、それぞれの人間模様、経済や社会的事情が重なったうえでのものなので、大切にしたい。
そしてその条件の一つ一つが空間の個性につながっていくので、納得のいく「お題」があればあるほどこちらも仕事が楽しかったりする。
逆にこれからご縁をいただく皆さん、自分から皆さんには、家や木を取り巻く社会的事情と自分の仕事の姿勢として、「伝統的手法」、「国産材」、「直営方式」といった「お題」をお願いすることになりますので、一つよろしくお願いいたします。
本日確定申告の最終日。
一昨日から領収書の整理を始めたのだが、今朝になってもまだ少し残っている。
しかも今日は朝から会議だ。
会議が予定よりも長引き、自宅に14時30分頃戻る。
移動時間を30分見たとすると、あと2時間しかない。
人は追いこまれると「バカ力」を発揮する。
年に何度とない集中力で、何とか16時45分に作業終了。
(正確に言うとわずかに残っていたのだが)
急いで自転車をまたぎ、鎌倉税務署に駆ける。
17時ちょうどぐらいに到着し、税務署に入れてもらう。
シャカリキに自転車をこいだので、もう、冷や汗交じりの汗だくである。
汗を幾度となくぬぐい、呼吸を整え、少しそこで作業して、無事(?)確定申告書を提出した。
確定申告前は、普段使わない「脳ミソ」を使う日である。
実に気が重いのであるが、しかしこの作業を自分でやることによって、自分の経済状況と世の中の仕組みの一部をよく把握できるので、自分にとって必要なコトなのだ、と言い聞かせて作業している。
そして作業が終わり、税務署の方に書類を提出した後は、学校の期末試験、あるいは大学受験が終わった直後のような、領収書の箱とともに実にスッキリした気分になる。つまり、何だか若返ったような気がするのである。
とはいえ、こんなギリギリではなくて日程に余裕を持ってまとめるなり、また日々、とまではいかなくてもせめて月単位で自分の経済をとりまとめるなりしようと、帰り自転車をゆっくりとこぎながら、自分に強く言い聞かせた次第である。
今日はI邸の竣工祝いパーティー。
I邸の工事に関わった職人さんたちや、作業のお手伝いに来ていただいた方々が約30人集まり、盛大に行われた。
Iさん、開店準備に忙しいさなか、美味しい食事のご用意をありがとうございます。
ご参加いただいた方々にそれぞれお言葉をいただいたが、この現場に誇りと愛着を持ち、楽しみながら関わっていただいたことがひしひしと伝わってきてうれしかった。
自分もこの現場は本当に楽しかった。
人と人との関わりが本気であることが、こんなにも楽しく、幸せなことであるということを肌で感じることができた。
そりゃお互い本気だからいろいろなことがあったけれど、そうしたことも含めて楽しむことができた。
Iさんのお母さんが、お祝いの言葉を色紙に書いてきてくれた。
それを大工の後藤さんが読んでくれた。
それによると、尺3寸角のクリの大黒柱は「幸せ柱」。
この「幸せ柱」を軸として、様々な幸せな関係が生まれた。
この現場での全てのできごとを中心で静かに見守ってきた、まさに幸せの「木の主」だった。
この間、ボクたちはこの建物を大事に育ててきた。
今日はこの建物の「成人式」だ。
今日のお祝いで、この建物は幸せに育ったことを確信した。
そして1週間と見ないうちに急に色っぽく、大人びたような気がして、よい意味で少し戸惑ったりもした。
いずれにしても、今日がこの建物の「成人」としての出発点。
イタリアンレストラン「piscaria」が成功しますように。
「幸せ柱」があるから、きっと大丈夫だ。