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2006年7月31日

代用品の時代

カテゴリー: 家づくりの理念

このまえの森林に関する本の感想の続きです。

産業が発達し、人口が増え、経済が成長すると、いよいよ生きるための資源を供給する森林は、減り続ける一方となりました。
森林は、自然界の賜物ですから、安定的に資源を供給してくれるとは限らず、また再生可能とはいえ、その時間も数十年かかります。
産業の発達に伴い、石油の利用やプラスティックの開発が進みましたが、当時の人たちは森林の減少と資源の枯渇に危機感を抱いたために、人類が長い間使い続けてきた資源の「代用品」を考えざるを得なかった、という見方をすることができるのではないかと思います。

私は家づくりの仕事において、極力石油商品やプラスティックに頼らないで家を作るように努めています。
というのも、「代用品」はやはり代用品であって、人類の身体にはあまり合わなかったようで、今それが化学物質過敏症やシックハウスという現象で顕在化しているからです。

とはいえ、私は石油をたくさん消費する車に乗りますし、木と土の家の中でも見渡せば生活用品の中で相当プラスティックが使われていますので、それらの存在を全否定することは説得力に乏しいといえるでしょう。
そして、それらは森林を守るための身代わりだったのだ、という見方をすれば、不覚にも(?)かなり情が沸いてきたりもします。
どんなものであれ、モノには命がありますからね。

しかし、今の世の中いくらなんでも「代用品」ばかりになってしまいました。
さらには、代用品の代用となる代用品、またその代用となる代用品を作り続けています。
そして人までもが、仕事でも遊びでも、どこまでも身代わりがいるような世の中になってしまいました。

やはりできることならば、人間は「本物」しか居ないわけですから、存在の吐息を感じることのできるような「本物」の世界を提案し続け、いつまでも「本物」がこの世に存在し続けられるようにしていきたいと思います。
あるいは代用品を選択せざるを得なかったとしても、より「本物」に近いものを選択するという見方で判断していきたいと思います。
「本物」は、私たちから遠ざかっているとはいえ、きっと私たちのことを覚えてくれているでしょうから、私たちに合う世界を作ってくれるような、そんな気がするからです。

例えば、ガスコンロと電磁調理器…
例えば、無垢板と合板フローリング…
様々な選択の判断基準になろうかと思います。

2006年7月30日

‘祭り’のあとに思う

カテゴリー: 横浜な邸


N邸上棟後、現場に板を広げて上棟のお祝い。
藤間建築工房のこれまでの仕事をねぎらうとともに、これから工事に携わる職方たちも集まり、今後の工事の安全を祈願しました。
Nさん、立派な祝いの場を設けていただきまして、ありがとうございました。

祝いが終わった今、祭りが終わった淋しさを感じつつ、様々な感慨が頭をよぎります。

K邸のKさんご夫婦や柿渋塗りで多大なる協力をいただいたS藤さんが見学に来ていただきました。

I邸(ピスカリア)の棟梁の後藤さんと現場で再会することができました。

方々から集まってくれた大工同士、大工技術について議論を交わしていました。

吉岡木材さんからは、「この家では木がよろこんでいる」と、うれしい言葉をいただきました。

Nさんからは、「こうした伝統構法による家づくりをぜひ続けてもらいたい」と、勇気付けられる言葉をいただきました。

こうした感動的な時間は、建て主さんのご尽力はもちろんとして、大工の技術と誇りを結集した伝統的な家の作り方によるところも大きいと感じます。
すばらしい建築技術と職人集団の継承のために、建て主さんたちの満足のために、森や木のために、そして自分自身の使命として、今日集まっていただいた面々により、私たちの住む地域の周辺で、こうした家づくりを一つ一つ、着実に継続していきたいという思いをいっそう強くしました。

2006年7月29日

今日も心地よい槌音が響く

カテゴリー: 横浜な邸

今日はN邸の建て方作業2日目。
コンシャン、コンシャンと、相変わらず心地よい槌音が、まちじゅうに響きます。
(シャン、というのは、こだまとして帰って来る音です。)

今日はいいお天気。
‘いい’を通り越して、太陽が暑い!

かけやも息を合わせて5人で同時に。
そういえば、はたからみるとかけや(大きな槌)を大工さんたちは気持ちよさそうに振っているように見えますが、実際に持つとけっこう重いのです。

今回藤間さんが最も苦労したところであり、そして藤間さんの凄味を感じる仕口の写真集。
普通はこうした部分は天井に隠れてしまうのですが、今回下から見上げたときに全て‘化粧’となるので、金物に頼らず、木組みで接合しました。
しかしこの上には間もなく野地板を貼るので、上から見た写真はこれで見納めです。
このままとっておきたいと思うほど、‘六叉路’が見事に決まりました。

上棟に向けて、最後の一撃。

上棟直後、喜ぶ藤間建築工房の面々。
約半年の苦労が実った瞬間です。
この日があるから、がんばれるのです。

夕方5時過ぎ、垂木も入れ終わったところで、幣串を立て、藤間建築工房ときらくなたてものやで記念写真。

感無量。

最後に、集まってくれた11名の大工、手伝いに来てくれた板金屋の鈴木さんと設備屋の川村さん、遠くから見学に来てくれた方々、そしてNさんご一家、皆様おつかれさまでした。

2006年7月28日

まちに響く槌音

カテゴリー: 横浜な邸

今日はついにN邸の建て方作業。
少し曇りがちと、外で作業するには絶好の日和。
また、伝統構法ばかりを手がける大工が11名集結したので、順調に組み上がっていきました。

今日は小屋梁の一部まで。
明日も作業を行います。

建て方作業は、最初が難関。
通し貫を通しつつ、通し柱に差し込みつつ、胴差を管柱に差し込んでいきます。

通し柱を土台に落としているところ。

7寸角の列柱。

かけやで叩き込んで、胴差を管柱に落としこみます。
4人で叩くかけやの躍動感のある槌音が、まちじゅうに響き渡ります。

2階床梁の様子。
尺五寸間隔で甲乙梁が入る梁が並んだ光景は、律動感があります。
伝統構法による建て方作業は、音楽のようです。

先ほどの床梁に、甲乙梁がかかった様子。

雇い車知栓の二段重ね。
下段の雇い車知栓は、藤間さん考案によるものですが、一般的なものよりも作業性がとてもよいとともに、強度もありそうです。

午後の休憩時には、1階の様子が分かる状態と成りました。
これらの構造体が、貫以外は基本的に全て見えることとなります。

夕刻、小屋梁を入れている様子。
何人かでかけやを使う場合、基本的には息を合わせ、同時に叩く必要があります。
その時響くかけやの「合唱」が気持ちよい。

2006年7月27日

上棟前夜

カテゴリー: 横浜な邸

明日はN邸の上棟。

現場に刻んだ木材を搬入したり、足場を組んだり、何かと慌しくなってきました。

何度迎えても、上棟前夜は気持ちが高ぶります。

2006年7月26日

キヲツカオウ

カテゴリー: 家づくりの理念


最近、森林や林業に関する本を読むことが多いのですが、今世界各地の森林では、至るところでたいへんなことが起きているようです。
人間は古くから、生きるために、豊かになるために木を伐採し、建築や土木用の木材や燃料として使ってきました。あるいは木を伐った跡地を、持続的に食料を確保するために、農地として使ってきました。
しかし、昔のように森林の成長と人間が木を使う量の調和がとれていればほとんど問題はなかったのですが、現在では人口が増え、循環よりも成長することが善しとされる考えの中で、明らかに木を使う量が増えてしまい、急速に森林が減少しているのです。

一方で、私たちの国の森林を見てみると、たくさん木を使うためにあれだけ有用な木を植林したにもかかわらず、現在の木材自給率は2割程度で、むしろこの国でとれる木をできるだけ多く使っていったほうがよさそうな状況です。

確かにこの時代、国産材を使う量を増やすことは日本の森林を再び豊かなものにする一つの必要条件かもしれません。
しかし、世界の森林事情を知れば知るほど、日本の森林問題を「量」で解決することは果たして森林に明るい未来をもたらすのかどうか、疑問に感じたりもしています。
仮にこのまま国産材の需要を伸ばす流れができたとするならば、経済の仕組みは森林の世界の調和を維持することができるでしょうか。世界の森林で起きていることと同じように、日本の森林が駆逐されることはないでしょうか。
森林再生に関する議論の中で、今需要のある集成材への加工を進めたり、あるいは海外輸出を増やそうではないか、という話を聞いたりすると、余計にその危惧を感じてしまいます。

木を使うということは、食べるという行為と同じように、一つの生命の力を私たちは拝借するわけです。
食事の前に「いただきます」と唱え、食べるときはお行儀を大事にするように、木を使うということも同じことではなかろうかと思います。
まして、一度使ったらこの先何十年、何百年と、目に見える形でお付き合いするわけですから。

だとするならば、木は流通商品として‘たくさん使ってあげる’モノではありません。
木を‘モノ’としてではなく、命あるものとして、そのふるさとと、育ててくれた人たちに思いを馳せ、然るべき行儀と作法のもとで使っていきたい、そして木がよろこぶ使い途を考えていきたい、木の使い途を考える立場の人間として、私はそう思うのです。

2006年7月25日

Nさん、木に愛を注ぐ(13回目)共同作業は絆を深める

カテゴリー: 横浜な邸

上棟までいよいよ1週間をきり、柿渋作業も大詰め。
今日はNさんご夫婦と私(私は11時過ぎまで)とで、柱を41本塗りました。

Nさんたちと私たちだけ、というのは久しぶりのことではないでしょうか。
手を動かしながら、Nさんたちの昔話をお聞かせいただきました。

共に仕事をするということは、お互いのことをよく知るとてもよい機会だと、改めて思いました。

今日は、ここに居る大工は小口さんだけ。
藤間さんと石山くんは、今頃現場で土台敷きです。

2006年7月23日

Nさん、木に愛を注ぐ(12回目)Kさんに感謝!

カテゴリー: 横浜な邸


今日はN邸の柿渋塗り。
ここ最近の日曜日の恒例です。

私はコーポラティブ住宅の総会のため、早々に引き上げてしまいましたが、前回に引き続き、K邸のKさんご夫婦がお手伝いに来てくださいました。
急きょ昨日ご連絡をいただき、来てくださることになったのですが、塗るべき材木の量が多かったので大助かりでした。
何度も来ていただくなんて、本当にありがたい限りです。

さてと、いよいよ上棟まで一週間をきりました。
少し気持ちが高ぶってきました。

六十の瞳という物語

カテゴリー: えこびれっじ


相変わらず一日をかけての、コーポラティブ住宅の総会。
最後、筋書き通りにはいかないなあ、ということを実感。
あらすじはあるけれど、日々ぞくぞくする展開。
だから、コーポラティブ住宅はおもしろいのです。