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2006年8月21日

風が身体を突き抜ける

カテゴリー: 横浜な邸


屋根は野地板が貼り終わり、そのうえに防水紙が貼り終わった状態です。

野地板を下から見上げたところ。
基本的には天井を貼らないので、これが「化粧」となります。

防水紙は、不織布によるもの(商品名:ルーフラミテクト)で、共和建材の五十嵐さんに教えていただきました。
これですと、野地板の通気を確保しつつ、防水することができます。
アスファルトを使っていないというだけでも、ホッとします。

状況を確認するために、屋根に登りました。

周りには遮るものが何もなく、風が身体を突き抜けます。
夕陽も美しい。
夕陽は、夏の終わりの表情でした。

気持ちよいので、しばらく棟のところで佇んでしまいました。

2006年8月19日

岐阜のまちで伝統の技に根付く現代の空間に出会った

カテゴリー: 今日のできごと


長良川の旅の帰り道、関東組3人を乗せた車は8月17日の朝6時前に岐阜のまちにたどり着いたのですが、せっかくなので岐阜のまちを観光することにしました。

岐阜というまちは正直よく知らなかったのですが、目を引く建物や街並みがあって、思いがけず堪能しました。

その中で、とくに感銘を受けたのが、「川原町屋」という喫茶店。
長良橋周辺の歴史的な街並みをブラブラ散策していたら、偶然出会いました。
この喫茶店は、和紙問屋を改装して作ったお店らしいのですが、この建物が通り土間といい、中庭といい、実によい!

とくに気に入ったのは、板倉構法による倉を改装した空間です。

三尺間隔に並ぶ五寸角(たぶん)の列柱。
六尺間隔にかかる、平角の登り梁。
その登り梁を支える、巨大なアカマツの牛梁。
七寸角(たぶん)のケヤキの大黒柱の向こうでは、アカマツの牛梁が、躍動感溢れる台持ち継ぎで継がれています。
そして、柱の間には、厚さ約八分(たぶん)の板の落とし壁。
元々そのような作りの空間に光を当て、家具を並べて、喫茶店として設えていました。
確かに伝統的な構法に基づく建物ですが、そこは古臭さなど感じることのない、現代の感性が融合した見事な空間でした。

実はここに至る直前に「コ○○珈琲」でモーニングをいただいていたのですが、そこでもう一度いただくことにしました。
やはりこうした空間でいただく食事は、チェーン店よりも美味い!です。
後で調べたら、珈琲ゼリーが絶品とのこと。
珈琲ゼリーを食べに、もう一度来よう!

※まさかこんなすばらしい空間に出会うとは思わず、手ぶらで散歩していたので、巻尺を持ち歩いていませんでした。だから上記の寸法は目分量です。

2006年8月18日

踊るまち

カテゴリー: 今日のできごと


長良川の旅の途中、郡上八幡のまちでは郡上おどりが開催中だったので、8月15日と16日の夜、参加してきました。
「郡上おどり」のすばらしいところは、振り付けが単純で(本当は奥が深いんでしょうけど)、見よう見まねですぐに覚えられるところです。
だから、子どもも大人も、地元の人たちも観光客も、そこに居合わせた人たちは皆、気軽に参加することができます。
もちろん川を旅する私たちの一行も踊りの輪の中に加わりました。

また、その日は、たまたま徹夜踊りの真っ只中。
丑三つ時だというのに、大勢の人たちと賑やかな音楽。
青春真っ只中の中学生や高校生も、文学青年風情の真面目そうな兄さんも、普段はやんちゃな兄ちゃん姉ちゃんも、飲み屋のママらしき姉さんも、観光に来たと思われる外人さんも、近所のじいさんもばあさんも、皆輪になって実に元気に、楽しそうに踊っています。
中には、小学生くらいの子どもまでいます。

このまちの力強さと懐の深さに、ただただ脱帽でした。
そして、このまちに住み続ける人たちはみんな、きっと自分のまちが大好きなんだろうな、と思いました。

まちに対する想いが、街並みにも明確に表れていました。

古い建物が、社寺仏閣だけではなく、生活の場として当たり前のように元気に存在しています。
むしろ、こってりとした伝統構法による家づくりの文化が色濃く残っています。

人が大勢いる夜中なのに、鍵なんてかけずに戸を開け放っています。
覗き込めば、家の様子がすぐに分かるくらいです。

道が、「車規格」ではなく、あくまでも「人間規格」です。
少し入れば、迷路のような路地裏の空間が残っています。

湧き水が豊かなのか、川と水の道がまさに生活空間の中に組み込まれています。
他のまちだったら道路脇の排水溝に当たる部分から水を柄杓でくみ出して打ち水している光景は、いささか驚きました。

あれだけ賑やかな街なかなのに、いわゆる全国チェーンの飲食店がほとんどありません。
私の知る限りでは、まちの外れを通っている国道沿いにコンビニが2軒ある程度でした。

とにもかくにも、そぞろに歩いていてとても楽しいまちでした。
そして街並みというものは、そこに住む人たちの想いと文化の表徴なのだ、ということを改めて感じた次第です。

ということで、ボクたちも明日からまちを挙げて踊ろうか!

2006年8月17日

父十周年の日

カテゴリー: 今日のできごと


本日は、上のムスメの10歳の誕生日。
昼過ぎ、川の旅からヨメの実家に戻り、午後は子どもたちの大好きな琵琶湖博物館へ。
そして夜は、お決まりのお誕生日ケーキでお祝い。

早いもので、ムスメは今日から10代の仲間入りです。
この世に出てきたあの瞬間から、もう10年経つんだなあ。
そういえば、あの日と同じように、本日奇しくも私は徹夜明けです。

この夏佐渡の海で真っ黒に日焼けし、まだまだ‘子ども’な感じもしますが、だんだんと大人の階段を上がっているような気もします。
こうして後ろから写真を撮ると、いつの間にか背はヨメと頭一つ分も変わらないくらいですなあ。

2006年8月11日

たてもの楽入門 第1章

8月6、7、8、9日と、4日連続で、みずがきランドにて山仕事塾を開催しました。

今回の山仕事塾は、
山梨県北西部の山の奥、
9尺×6尺という小さな小さな小屋を、
近くで伐採したカラマツを使い、
日本の伝統的な木組みにより、
地元の大工さんの指導を仰ぎながら、
参加した皆さんの手で作ってみよう!
という試みです。

それに加えて、大工仕事を始める前に、目の前にある材木の出生のヒミツを探るべく、森の中に入って山仕事を行い、また作業後は、地元の方の昔話などを聞いた後、山を元気にするにはどうしたらよいか、みんなで知恵を出し合いました。

地元の方々の多大なる協力と、
現地NPOスタッフの尽力と、
参加者の温かい輪の中で、
実に感動的で充実した日々でした。

世界は広く、どこまでも深い。
だけど、楽しみたい、楽しませたい、という、人として素直な気持ちを表現すれば、少しずつかもしれないけれど、世界は変わる。
手を動かせば何かが動き、
手と手は人をつなげてゆく。
そしてよい仕事をした後の誇りと爽快感。

たてもの作りとは、それらを身をもって実感できるとてもよい機会だいうことを、自分自身、改めて気づかされました。

さらには、身近な場所で採れた食材による、美味しいごはんの日々!
そこは紛れもなく、人としての幸せが凝縮された世界でした。

■1日目

どこかで見た作業。
そう、焼杉作りです。

ゆらりとした時間の中で、子どもも働きます。

泥の攪拌。
昔から子どもの仕事。
30分ほど、子どもたちはぐるぐると泥のプールの中を歩いてました。

下の小川で川遊び。
水は思いのほか冷たく気持ちよく、この季節たまりません。

おやつをダッチオーブンで料理。
それ用の薪を作っているところです。
こどもが薪割りにはまっていました。
そういえば、これも昔は子どもたちの仕事でした。

■2日目

地元の方(猟師さん)の指導を仰ぎ、除伐作業。
1時間余りの作業でしたが、汗が滴り落ちる、なかなかしんどい作業でした。

今、この山仕事の手が全然足りていないそうです。

大工仕事、前夜祭。
NPOの若者達が育てた野菜を中心に、バーベキュー。

■3日目

地元の大工さんの多大なる協力と指導を得て、参加者みんなで大工仕事。
道具の使い方や、昔の大工の世界など、大工仕事に関するいろいろなことを熱く語ってくださいました。

さっそくノミで材木の加工。
皆さん、丁寧に仕事をするので、なかなかのデキでした。

大人が作業に没頭している間、
子どもたちは、端材で積木遊び。
木というものは、どこまでも使えます。

いよいよ組立。

徐々に組み上がっていきます。
実に順調です。

ついに、その日中に上棟してしまいました。
どんなに小さくても、上棟は感激します。
皆の手によるものならば、なおさらです。

■4日目

最終日、大工仕事の続きを行う予定でしたが、雨模様だったので急きょ予定を変更し、NPOの若者達が育てている畑を訪れ、朝採り体験。
これはこれでたいへんうれしい。

付近の散策の途中見つけた炭焼小屋。
昔は、この集落に住む人たちは皆、炭焼で生計を立てていたようですが、炭焼小屋もわずかとなってしまいました。

雨も上がったので、通し貫。だけ入れました。

■番外編

何しろ、美味しいごはんに恵まれた日々でした。

ダッチオーブンでおやつやごはん。
野菜の旨味が引き立ちます。

ダッチオーブンで作ったポテト。
うまい!

そこでは、養蜂をやっています。
そのハチミツ。
売っているものに比べて、コクと香りがぜんぜん違います。
これまたうまい!

そこで飼っているヤギの乳によるチーズ。
S藤さんが作りました。
これがまたうまい!

最後、お別れのとき。
4日間があっという間でした。
去るのはつらく、後ろ髪引かれる思いでしたが、来月またやるということで。

今度は、竹小舞と泥付け。
今から楽しみです。

2006年8月4日

三日連続夏の太陽の下で

カテゴリー: えこびれっじ

三日連続夏の太陽の下で焼杉作業敢行。
おかげで何リットルもの汗をかき、健康そのものの生活でした。

また、ずっと太陽に照らされていたので、肌の色は小麦色を通り越して、サーファーと見まがうばかりの褐色に。
スギの板だけでなく、私も焼けました。

2006年7月31日

代用品の時代

カテゴリー: 家づくりの理念

このまえの森林に関する本の感想の続きです。

産業が発達し、人口が増え、経済が成長すると、いよいよ生きるための資源を供給する森林は、減り続ける一方となりました。
森林は、自然界の賜物ですから、安定的に資源を供給してくれるとは限らず、また再生可能とはいえ、その時間も数十年かかります。
産業の発達に伴い、石油の利用やプラスティックの開発が進みましたが、当時の人たちは森林の減少と資源の枯渇に危機感を抱いたために、人類が長い間使い続けてきた資源の「代用品」を考えざるを得なかった、という見方をすることができるのではないかと思います。

私は家づくりの仕事において、極力石油商品やプラスティックに頼らないで家を作るように努めています。
というのも、「代用品」はやはり代用品であって、人類の身体にはあまり合わなかったようで、今それが化学物質過敏症やシックハウスという現象で顕在化しているからです。

とはいえ、私は石油をたくさん消費する車に乗りますし、木と土の家の中でも見渡せば生活用品の中で相当プラスティックが使われていますので、それらの存在を全否定することは説得力に乏しいといえるでしょう。
そして、それらは森林を守るための身代わりだったのだ、という見方をすれば、不覚にも(?)かなり情が沸いてきたりもします。
どんなものであれ、モノには命がありますからね。

しかし、今の世の中いくらなんでも「代用品」ばかりになってしまいました。
さらには、代用品の代用となる代用品、またその代用となる代用品を作り続けています。
そして人までもが、仕事でも遊びでも、どこまでも身代わりがいるような世の中になってしまいました。

やはりできることならば、人間は「本物」しか居ないわけですから、存在の吐息を感じることのできるような「本物」の世界を提案し続け、いつまでも「本物」がこの世に存在し続けられるようにしていきたいと思います。
あるいは代用品を選択せざるを得なかったとしても、より「本物」に近いものを選択するという見方で判断していきたいと思います。
「本物」は、私たちから遠ざかっているとはいえ、きっと私たちのことを覚えてくれているでしょうから、私たちに合う世界を作ってくれるような、そんな気がするからです。

例えば、ガスコンロと電磁調理器…
例えば、無垢板と合板フローリング…
様々な選択の判断基準になろうかと思います。

2006年7月30日

‘祭り’のあとに思う

カテゴリー: 横浜な邸


N邸上棟後、現場に板を広げて上棟のお祝い。
藤間建築工房のこれまでの仕事をねぎらうとともに、これから工事に携わる職方たちも集まり、今後の工事の安全を祈願しました。
Nさん、立派な祝いの場を設けていただきまして、ありがとうございました。

祝いが終わった今、祭りが終わった淋しさを感じつつ、様々な感慨が頭をよぎります。

K邸のKさんご夫婦や柿渋塗りで多大なる協力をいただいたS藤さんが見学に来ていただきました。

I邸(ピスカリア)の棟梁の後藤さんと現場で再会することができました。

方々から集まってくれた大工同士、大工技術について議論を交わしていました。

吉岡木材さんからは、「この家では木がよろこんでいる」と、うれしい言葉をいただきました。

Nさんからは、「こうした伝統構法による家づくりをぜひ続けてもらいたい」と、勇気付けられる言葉をいただきました。

こうした感動的な時間は、建て主さんのご尽力はもちろんとして、大工の技術と誇りを結集した伝統的な家の作り方によるところも大きいと感じます。
すばらしい建築技術と職人集団の継承のために、建て主さんたちの満足のために、森や木のために、そして自分自身の使命として、今日集まっていただいた面々により、私たちの住む地域の周辺で、こうした家づくりを一つ一つ、着実に継続していきたいという思いをいっそう強くしました。

2006年7月29日

今日も心地よい槌音が響く

カテゴリー: 横浜な邸

今日はN邸の建て方作業2日目。
コンシャン、コンシャンと、相変わらず心地よい槌音が、まちじゅうに響きます。
(シャン、というのは、こだまとして帰って来る音です。)

今日はいいお天気。
‘いい’を通り越して、太陽が暑い!

かけやも息を合わせて5人で同時に。
そういえば、はたからみるとかけや(大きな槌)を大工さんたちは気持ちよさそうに振っているように見えますが、実際に持つとけっこう重いのです。

今回藤間さんが最も苦労したところであり、そして藤間さんの凄味を感じる仕口の写真集。
普通はこうした部分は天井に隠れてしまうのですが、今回下から見上げたときに全て‘化粧’となるので、金物に頼らず、木組みで接合しました。
しかしこの上には間もなく野地板を貼るので、上から見た写真はこれで見納めです。
このままとっておきたいと思うほど、‘六叉路’が見事に決まりました。

上棟に向けて、最後の一撃。

上棟直後、喜ぶ藤間建築工房の面々。
約半年の苦労が実った瞬間です。
この日があるから、がんばれるのです。

夕方5時過ぎ、垂木も入れ終わったところで、幣串を立て、藤間建築工房ときらくなたてものやで記念写真。

感無量。

最後に、集まってくれた11名の大工、手伝いに来てくれた板金屋の鈴木さんと設備屋の川村さん、遠くから見学に来てくれた方々、そしてNさんご一家、皆様おつかれさまでした。