白い柔肌のユカ
八王子や邸の床板は、
椹(サワラ)の板。
寿司桶や風呂桶などに使われる
水に強い、
とても柔らかい木です。
柔らかいだけに、
傷付きやすい反面、
足触りが吸いつくようで、
冬はほんのりとあたたかく、
夏はサラリとした触感。
色は淡く黄色というか、
赤味を帯びた白い肌。
とくにこの家は、
床暖房を施しているだけに、
ほとんど節のない板を
選びました。
この家全体にも
言えることですが、
女性的な形容詞が
とても似合う木です。
八王子や邸の襖は、
建主さんがお持ちだった
三種の手漉きの葛布を
貼っています。
前も申し上げたとおり、
葛布は今、機械で漉いていて、
手漉きの葛布はもう
ほとんど手に入らないとのこと。
機械漉きの葛布も
悪くはないのですが、
手漉きのものと比べると、
やはり味わいの深さは
手漉きのものには
かないません。
葛はその辺の里山に
たくさん生えていますが、
漉いてくださる人が
いなくなってしまったという
ことですね。
こんなに味わい深く、
またたいへん長持ちだというのに、
実にもったいないことです。
こうした手工芸品が
生き残れる世の中で
あってほしいと思います。