2011年11月6日
木の家を設計するうえで
難しいことはいろいろありますが、
その中で一番難しいことを
敢えて挙げるとすれば何?
と問われたら、
今の私は「照明計画」と答えます。
柱も梁も木組みを見せ、
その間に土壁を塗り込む
家の作り方は、
電気配線の通る道に限りがあり、
照明器具を仕込むフトコロも、
ほとんどの場合ありません。
ではどうしているのか。
一つ目は、
人の視線から隠れる
梁の側面や上面をねらって、
照明器具を仕込むことです。
そうすると、
木組みを照らす間接照明のような
雰囲気のある灯りとなります。
とくに最近では、
この方法を採用することが
多いですが、
‘隠れる’位置を探すことが
一苦労となります。
二つ目は、
部分的に梁の間にフトコロを作って、
ダウンライトなどを
仕込む方法です。
この方法でしたら、
梁組みの印象を壊さず、
かつ照明器具が目立ちません。
例えば以前は
響き止めの手法を応用して、
照明器具用のフトコロを
作ったこともありました。
最後の三つ目は、
開き直って配線や電球そのものを
見せる照明です。
配線に関しては、
昔ながらの碍子配線があります。
細く黒い配線が見えてきますが、
碍子がリズミカルで、
案外いい感じです。
昨年春に完成した鎌倉か邸では、
電気配線用に柱梁へ穴を開けないために、
徹底的に碍子配線を活用しましたが、
ぞれ自体がデザイン、
という感じでした。
それと電球が
むき出しとなっている照明器具は、
器具代がたいへん安いので、
予算を下げるために
採用することが多いのですが、
付ける位置を工夫すれば、
木組みを‘殺す’ことなく、
全方位に放つ光が、
意外な効果を作って
かえっておもしろかったりします。
ちなみに我が家の照明は、
一個数百円の器具を使って、
ほとんどがこの方法です。
例えば廊下の照明器具は、
渡りアゴの先端に付いているのですが、
渡りアゴに立体感のある
影を作ったり、
嵌め殺しの硝子に映って、
奥行きを演出したり、
仕切り用の竹小舞の影を
壁に何層にも映し出したり、
色々と思いがけぬ効果が
生まれました。
計算してこうなりました、
と言えばカッコいいんですけどね、
正直に申せば、
当時予算がなかったのです(笑)。
いずれにしても木を見せる家は、
付けられる位置が限られているので、
照明計画はたいへん難しい作業なのですが、
しかし限られているからこそ、
現場ごとにどうしようかと悩み、
その結果様々な発想、
様々な‘答え’が
出てきたりもします。
今後そんな目で、
伝統工法の建物の
照明を見てみてください。