2012年7月27日
大学時代、
私に向けた何の寄せ書きだったかは
ちょっと思い出せないのですが、
私の親しかった友人が、
「吾唯足知」と、
「口」の四方に文字を重ねた
竜安寺のつくばいそのままを
書いてくれたことは
よく覚えています。
その時は、
おもしろいな、程度に
この文字を眺めていたのですが、
今になって
この文字こそが
現代社会における幸福論において、
鍵となる言葉だと
強く思っています。
経済のこと、
食のこと、
エネルギーのこと、
そして住まいに関しても
それが当てはまると
考えています。
例えば現在、
住宅の省エネ性能の確保が
将来義務化されることに先立ち、
伝統工法の温熱環境に関する研究が
本格的に始まったところなのですが、
温熱環境を改善するために、
例えば土壁に「断熱材」を添えれば、
割と簡便に解決するのだと思います。
しかし断熱材のことを
色々調べてみると、
その大半は原料を海外に頼り、
またそれを作るのに、
莫大な生産エネルギーを
要するようです。
だとすれば、
まだまだ施策を決める前の研究段階、
今私が取り組んでいるように、
いわゆる「断熱材」に頼らないことを
めざしてみたいのです。
つまり、木や土、藁や竹、紙や石など
身近にいただくことのできる素材を使った住宅の、
「足るを知る」温熱環境の着地点は
一体どこなのか、ということを探りたい。
暑くないわけではないけど、
十分暮らせる家、
寒くないわけではないけど、
十分暮らせる家。
それに行き着くことが
真の「省エネ」、
真の快適な家なのではないかと
考えています。
「足るを知れ」というと、
何か禁欲的な響きを
感じる向きもあろうかと思いますが、
むしろ遠い将来まで見据えた
「おいしい」「楽しい」「心地よい」
そして「健康」をもたらす
哲学と捉えて、
今後強く意識し、
提案していきたいと
思います。