瓦をみせる下屋
海老名た邸にて。
道路を隔てて
海老名た邸を望むと、
黒い壁とともに、
下屋の瓦が
目に入ります。
この瓦は、
いつも使わせていただいている
五十嵐さんが達磨窯で焼いた燻し瓦。
このように道路側を
下屋としたことにより、
瓦がよく見えるように
なりました。
海老名た邸にて。
この家の外壁は
木の風合いが
透けて見える黒壁。
柿渋コートの
「すみ色」を塗った
杉板です。
この家も、
一日かがりで
建主さんご家族に
塗っていただきました。
私たちを知ってくださる
きっかけになった海老名せ邸が
焼杉板なのですが、
この色は一見すると、
焼杉板に見えます。
海老名た邸にて。
洗面所の照明も、
ワンコインライトが二つ。
下屋と上屋が取り合う部位を
ワンコインライトが
柔らかくあたたかく照らします。
そして毎朝毎晩顔を
ワンコインライトが
柔らかくあたたかく照らします。
この柔らかさ、
このあたたかさは、
白熱電球だからこそ。
だからこの光に
照らされた家、
だからこの光に
照らされた人は、
柔らかくあたたかくなると
信じ込んでいます。
やはりこの世から、
なくしてはならない。
海老名た邸にて。
陶器製レセップとボール球、
いわばワンコインライトに照らされた
小屋組み。
ワンコインライトは、
全方位に光が放たれるので、
床面だけではなく小屋組も、
柔らかく照らしてくれるのです。
海老名た邸にて。
1階の中廊下。
建て替える前まで
数十年来この家で使われていた
硝子入り障子が並び、
その奥に、
新たに入れた障子が見えます。
新旧入り混じっても、
案外馴染むものです。
建具は取り外しが容易なので、
寸法に大きな問題がなければ、
少し直して
ずっと使い続けることが
できるので、
建て替えたとしても、
何となく懐かしい気持ちに
させてくれます。
今日の見学会でも、
前の家を知るご近所の方々が
この建具の前で
感慨深そうにしていました。
ところで腰に嵌まっている硝子は、
「昭和」の雰囲気が漂う
紅葉柄の模様が入ったもの。
根強い人気があるようで、
今日もこの硝子に反応している方が
少なからずいらっしゃいました。
しかし残念ながら、
私の知るかぎり、
最近では作られていないようです。
工業製品の
定めといえば定めですが、
そう聞くとさらに
大事にしていきたいと
思うのであります。
海老名た邸にて。
今日の午後は、
建主さんのご厚意を得て
完成見学会。
今日はとくに、
建主さんのご近所のお友だちに
たくさん来ていただきました。
工事中の現場の前を
通りがかるご近所の方々が
この‘めずらしい’工法に
興味津々だったようで、
それでこの機会に、
足を運んでくださったようです。
たいへん
ありがたいことです。
そういえば、
ここの建主さんとの出会いも、
5〜6年前、
ここから約2km先で進めていた
海老名せ邸の現場を
たまたま散歩で通りがかり、
それを機会に
私たちのことを
知ってくださって、
数年越しに
声をかけていただいたのでした。
僕たちは、
目の前の現場に全力投球で、
広く知っていただく活動まで
なかなか手をつけられずに
ここまで来ましたが、
そのさまを見て、
幸いなことに
声をかけてくださるのですから、
人生、
捨てたもんじゃありません。
見学会が終わり、
どっぷり日が暮れて、
別れ際建主さんと
しばしお話を
させていただきましたが、
今日もやはり
建主さんの口から、
示しを合わせたかのように
‘さみしい’という言葉を
何度となく耳にしました。
完成した時の
この感覚は、
家づくりの過程を
とても楽しんで
くださったからこそ。
本来ものづくりが持つ
宿命のような気がしています。
ボクはこのさみしさを
大事にしていきたい。
そしてこの‘さみしい’工法が
決して‘めずらしい’ことではなく、
普遍的なことになっていけるよう、
やっぱり
広く知っていただく活動にも、
注力していきたいと思います(笑)。