きらくな版今後の省エネルギー対策のあり方に対する意見
今後の住宅・建築物の省エネルギー対策の
あり方に対する意見へのパブリックコメントが
年始早々の昨日〆切だったので、
駆け込みで以下のとおり
意見を述べさせていただきました。
色々書きましたが、
つまりは様々な暮らしの哲学がある中で、
それらの一部に制約を与えてよいものか、
という疑問を投げかけたいと思っています。
建築界の絶滅危惧種の主張の一つとして
お読みいただければ幸いです。
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「検討趣旨」について
「居住・執務等のために消費されるエネルギー量は、他分野に比べ増大傾向が顕著であり」,とありますが、居住のために消費されるエネルギー量のうち約1/3を占める暖房エネルギーについて、ここ50年間の一戸当たりの消費量の推移を調べてみました。1965年から1973年の間、つまり高度成長期に一気に1.68倍に膨れ上がり、それ以降は現在に至るまで、ほぼ横ばいまたは漸増傾向にあります。一気に増加した1965年から1973年にかけては、こじつけかもしれませんが、土壁が衰退し、現代的な乾式工法の黎明期と一致します。つまり伝統的な工法を手放し、現代的な豊かに見える生活を手に入れた結果、暖房エネルギーがわずか10年足らずで1.68倍も増えました。さらに、いささか皮肉的に捉えると、30〜40年前は断熱材がほとんど入っていなかったのに対し、ここ十数年は「省エネ」の概念が浸透してほぼ必ず断熱材を入れていますが、暖房エネルギー量は減るどころか、少し増えています。
いずれにしても、以上のことを含め、もしエネルギー消費量の増大が顕著だとすれば、どの分野の増大が顕著か、詳しい分析を行う必要があるように思います。
「講ずべき施策の方向」について
私たちが目ざすべきは、あくまでも「省エネルギー」です。外皮性能の向上だけが着目されていますが、無駄な物的消費を抑える、エネルギーに対する課税を強化する、などといった、他に効果のありそうな方策にも着目すべきです。
実際、「省エネルギー化」を図るために、今すぐに取り組むことのできない建築物の改善よりも、暮らし方を見直すことにより解決しようとする国民が少しずつ増えてきている実感があります。またその暮らし方を見直す契機づくりを、国が行うべきと考えます。
「外皮性能の確保」について
日本建築家協会(JIA)が建築の外皮性能とエネルギー消費量の相関関係の調査を行い、その調査に関わらせていただきましたが、外皮性能とエネルギー消費量が比例的な関係にあるとはいえず、むしろ住まい手の過去の生活履歴や暮らしの哲学にかなり影響されると私は推測します。
確かに外皮性能を上げれば、一時的に現在よりも消費エネルギーが低減する傾向にあると思うのですが、しばらくして外皮性能の高い居住環境に慣れてしまえば、再びエネルギー消費量は増え始め、あるいは私たちの温度変化に対する適応力がますます劣っていくのではないかという懸念を抱いています。事実、数十年前までは夏季にエアコンがないのは当たり前でしたが、現在ではなくては暮らしていけないと考えている方が多いのではないでしょうか。またエアコンの普及率と熱中症による死亡者数の相関関係を調べてみると、ここ数十年の間、逆比例関係にあるどころか、比例関係にあります。