終わり始まる
鎌倉台て邸にて。
一年の折り返し、かつ、
私と担当した大工が誕生日の今日、
物語が一つ、
終わりを迎えてしまいました。
帰り際、
普段口数の少ないご主人から
改まってお礼とねぎらいの言葉を
かけていただいた時は、
照れながらも
ちょっとホロリと
来てしまいました。
子どもたちよ、
お父さんとお母さんは、
とてもいい仕事をしました。
ここでぜひ伸び伸びと
育ってください。
きらくなたてものやのタイル工事は、
プローブの小澤啓一さんです。
体育会系と音楽系が多い、
きらくなたてものやの仲間たちですが、
小澤さんもバリバリの体育会系。
その昔、
誰でも知っている
甲子園出場常連の強豪高校で、
エースとして活躍していましたが、
現在は家業を継いで、
タイル職人となっています。
しかしきらくなたてものやでは
タイル職人として通ってますが、
実は左官仕事もできて
クロスも貼ることができる
内装仕上げの「万能選手」でもあります。
そんな器用な小澤さんの仕事ぶりですが、
タイルや石を貼っている時は、
話しかけてはいけないと思うほど、
ピンと張り詰めた空気が漂い、
慎重に精密に仕事を進めていきます。
そうして貼られたタイルや石は、
細部を見るまでもなく、
全体の整った表情に現れています。
いつも物静かに
仕事を進める小澤さんですが、
その背中と仕上がり具合が
建主さんの心に多くを語りかけるようで、
私の周りでは
なんと小澤ファンの多いこと。
その人気も「エース」級です。
ところでタイル貼りの下地の技法は、
幾つかありますが、
現代の主流は、
石膏ボードに接着剤で貼っていく方法です。
きらくなたてものやでも、
極力安全な接着剤を選んだうえで
そのように貼ることもありますが、
その技法が主流になる前は、
下地全体をモルタルで作り、
タイルの裏にモルタルを付けて
その下地に貼っていく、
いわゆる「だんご貼」でした。
真っ平らに下地を作らねばならなかったり、
高い技術を要するので、
今そのような技法で貼ることは
ほとんどなくなってしまいましたが、
少なくともお風呂の石やタイルは、
そのように貼っています。
それをこともなげにやってくれる
数少ない職人でもあります。
追伸
小澤さんも、
職人が作る木の家ネットの一会員です。
森田さん同様、
たぶん最初で唯一の
タイル職人の会員です。
きらくなたてものやの硝子工事は、
須藤硝子です。
須藤さんは、
東京都練馬区で硝子屋を営んでいますが、
大工の藤間さんからの紹介で、
私が自宅を建てた17年前からのご縁です。
まだ右も左も分からなかった17年前、
各職人たちのところに出向いて
こんな私をぜひ相手してやってくれと
あいさつをして回ったのですが、
例外なく須藤さんのところにも
足を運びました。
最初は仕事の話から始まり、
だんだん世間話などになってきた時に、
何かのきっかけで、
「自分はラグビーをやってまして」
という話題になったところ、
須藤さんもにやりと笑って、
自分もラグビーをしていたと、
うれしそうに返事をされました。
そこで私は、
須藤さんの名前にピンときて
「もしかしてあの大東文化大学の須藤さんですか?」
と興奮してお聞きした覚えがあります。
と申しますのも、
私は高校生の時からラグビーを始め、
ラグビーのことをよく知ろうと、
その頃ラグビーの試合が
テレビであると知るや
欠かさず観戦し、
雑誌も読み漁っていました。
そして私が高校二年生のとき、
大東文化大学が大学日本一になり、
旋風を巻き起こしたのですが、
その時スクラムハーフのレギュラーとして
試合に出ていたのが須藤明さんでした。
だからその名前に
なんとなく聞き覚えがあったのです。
野球で言えば、
有名なプロ野球選手に出会ったような気分。
確か社会人に行って
ラグビーされていたはずだし、
まさかこんな形で
お会いできるとは
思いもしませんでした。
しかもポジション柄もあって
そんなごつくもなく、
いい意味で、
ラグビーで頂点を経験したとは思えないほど
とても謙虚で物静かな印象の方だったので、
まさか、まさかです。
しかしそういう目で見ると、
腕の筋肉は隆々としていて、
近年ペアガラスが主流になって
年々重くなるガラスを
何事もなさげに持ち上げるなど
その片鱗を垣間見せてくれます。
そんな須藤さんですから、
今度現場でお会いしたときは、
ぜひ今話題のラグビーの話で
盛り上がってみてください。
久々の「すばらしき仲間」の記事です。
きらくなたてものやの水道工事は、
基本的に森田水工の森田さんが担当してます。
森田さんが現場にいると、
すぐに分かります。
なぜなら、
きらくなたてものやの現場は、
いつもだいたい和気藹々としておりますが、
森田さんが来るといつにもまして、
本人や周りの人たちの笑い声が
高らかに響き渡るからです。
仕事の後の飲み会でも、
そんな感じでほぼ主役級(笑)、
楽器があればなおさらです。
つまり、
それだけ周りをぱっと明るくする
力を持っています。
森田さんが持つ力は、
それだけではありません。
まず建前の時は必ず
如何にも大工らしいいでたちで現れて、
「あなた本当に水道屋さんですか?」
と質問したくなるほど
よく掛矢を振っています。
それだけ大工が刻む継手・仕口を熟知し、
大工からも厚く信頼されています。
次に、
彼が屋外の配管工事をする時は、
必ずと言っていいほど雨が降ります。
雨が降ったら、
格段に作業しづらくなるのに、です。
なにしろ
最初に一緒に仕事をした現場では、
雨どころか、
下着が透けて見えてしまうほど
濡れてしまう土砂降りの中、
一人で作業を進めていた姿を
強烈に覚えています。
もしかしたら、
きらくなたてものやの仕事に限った
話かもしれませんが、
それにしても神がかっています。
水道屋だけに、
水を呼びたいときは、
ぜひきらくなたてものやまで
ご相談ください(笑)。
そんな愉快な森田さんですが、
実はものすごく繊細で、
細かいところまで気配りし、
仕事もていねいです。
仲間だからひいき目で
褒め称えているのではありません。
作業前や作業中、
電話でいちばん確認のやり取りが多いのは、
森田さんかもしれません。
また、
大工と厚い信頼関係があるので、
床や壁の下地などを作る際、
どうしたらお互いに仕事しやすいか、
常に話し合い、考えながら
仕事を進めています。
水道設備の仕上がりは、
工業製品を取り扱う場合が大半で
当たり前のように
取り付いているように感じますが、
ぜひその背景にある仕事を
ご覧いただければと思います。
そういえば、
建物の中でいちばん老朽化が早いのは、
水道設備かもしれません。
その時は真っ先に森田さんがかけつけ、
明るくていねいに、
仕事していくと思いますので、
ぜひご安心ください。
追伸
森田さんは水道屋ですが、
「職人が作る木の家ネット」の会員でもあります。
水道屋ではたぶん初の会員です。
今日はピスカリアの定休日を利用して、
毎年恒例の「自然界と調和した暮らしの哲学入門」の日。
今年で四回目を数えます。
今回もたくさんの方々に
足をお運びいただき、
ありがとうございました。
「食」は、ナチュラルハーモニーの河名さん、
「医」は、ホスメッククリニックの三好さん、
「住」は、きらくなたてものやの日高、
分野は異なるし、
三者三様の話でしたが、
伝えたいことは共通している
といつも思います。
三好さんが講演でおっしゃっていたとおり、
五感を研ぎ澄ませることによって感じる
おいしい、楽しい、安全に、
(住まいの場合は、心地よい)
の中に本質があるということ、
そして健康の秘訣は、
歩くこと。
そう、「汗」が大事だと
私も思います。
つまり、
四六時中鉄筋コンクリートの箱に囲まれた中、
身体を動かす機会もなく、
理屈を考えてばかりで、
例えば目の前のおいしい料理を
「頭」でいただく、
現代がそんな傾向にあるからこその
提案だったように思います。
すぐにナチュラルハーモニーのお店に行って
お米と野菜を買わなくても、
(おいしいのでぜひすぐに食べてほしいけど(笑))
明日から五感と汗を
より大事に暮らそうではありませんか。
そう、ナチュラルハーモニーから
野菜を仕入れているピスカリアの料理は、
たとえ事前の解説がなくても、
五感が喜ぶおいしさです。
先日の「遠足」で伺った、
達磨窯が鎮座する五十嵐さんの工場にて。
ここへ訪れると、
現代の瓦と達磨窯で焼いた瓦の
違いを説明するために
五十嵐さんは水の溜まった古い風呂桶に
二つの瓦をジャボンと入れて見せます。
現代の瓦は
水が全くひかないのに対して、
達磨窯で焼いた瓦は、
みるみる水がひいていきます。
つまり瓦が
スポンジのように
水を吸うことの証拠です。
これにより
雨が降ると一時的に屋根が重くなる反面、
瓦の裏は水分、どころか、
湿気がこもることがなく、
また雨が降った後に
お日さまが照り、
水分が蒸発することによって、
気化熱が奪われ、
屋根に熱が
こもりにくくなります。
これは外壁に木の板を張った場合も
木も多少水を吸うので
似たような現象が起こります。
つまり現代は、
雨を含め外部のものは
徹底的に排除する、
一方で伝統的なものは
いったん受け入れて徐々に流す、
そんな考え方の違いが
瓦からもはっきりと読み取れます。
もっとも古い時代は、
技術的にそうするほか
なかったのかもしれません。
しかし雨に限らず、
「いったん受け入れて徐々に流す」
という素材の作法は、
なんだかとても日本的で
日本の気候風土に
合っているような感覚が
私にはあります。
実際に温度湿度の高い夏場は、
現代の家よりは格段に
小屋裏部屋が快適だし、
今のような梅雨時も、
家の中の空気がさらっとしています。
じゃあその効果のほどを
具体的に科学的に証明せよと
この現代は言われそうですが、
体感して気持ちいい、
まずはそれで
よいではありませんか。
余談ですが人間関係も、
そのほうがうまくいきそうです。
鎌倉台て邸にて。
今朝畳屋さんが来て、
古いほうの家屋の
二間続きの和室に敷いてある畳を
新しい畳に替えるために
古い畳を
引き取っていきました。
すると、
古い畳の下に新聞紙が敷かれていて、
紙面を読んでみると、
片方の和室は昭和48年、
もう一つの和室は昭和38年の新聞でした。
時間がなかったので、
さーっとしか目を通しませんでしたが、
時間があれば面白そうだったので
じっくりと読みふけりたかったです。
床下から上がる隙間風を防ぐために
畳の下にはよく新聞紙が敷かれていますが、
もう一つ、
エンジンオイルを入れ替える
時期を記録するかのように、
畳を入れ替えた年の記録を後世に伝え、
またその年の思い出も伝える、
タイムカプセルのような
役割を果たしてくれます。