湘南だったら断熱材不要論その1
鎌倉く邸の屋根に、
ほぼ瓦が載りました。
試しに、
家の中からサワラの野地板に
手のひらを当ててみると、
外は灼熱の陽が注いでいるというのに、
そのサワラは、何事もないかのように、
ごく平静を保っています。
夏の暑い日、小屋裏って、
むせ返るように暑いという
印象があろうかと思いますが、
断熱材の入っていない、
厚い木の板と瓦の屋根は、
風が通るとむしろ、
家の中でいちばん涼しいくらいです。
こうした現象を見る限り、
この地域で木の家を作るときには、
いわゆる断熱材に頼らなくても、
木と土を基本に、
快適な室内環境は得られるのだ!
と私は思っています。
木や土自体、
決して断熱性能が高いわけではありませんが、
これらの素材の自律作用を生かしつつ、
家全体に風の流れを作り、
熱や冷気を和らげる仕組みを作るのです。
例えば屋根に関しては、
きらくなたてものやの場合、
瓦を載せ、その下には瓦を受ける野地板。
さらに1寸厚の通気層を挟んで、
家の中の天井を兼ねた、
厚い板による化粧野地板。
なお、通気層の空気は、
軒先と棟に換気口があり、
常に空気が流れています。
これで先ほどのような現象となります。
空気が流れるというのは重要で、
それは瓦と野地板の関係を見ても分かります。
瓦と野地板は、けっこう隙間が空いているもので、
この隙間が、熱を和らげてくれます。
試しに、太陽が燦燦と照っているときに、
瓦の裏を触れてみると、
これがかなり熱いのですが、
その直下にある野地板に触れると、
不思議なほど熱さを感じない。
しかし、その通気層、
過酷な熱や冷気を和らげてくれるということは、
常に過酷な熱や冷気に晒されているということですから、
蒸れたり結露したりしやすく、
その場合は、次第に周辺の素材が傷んでしまいます。
ですので、
通気層を設ける際には、
空気の流れる状況、
あるいは湿気のこもらない状態を作るということを
常に意識する必要があります。
そうした視点で見ると、
五十嵐さんの燻し瓦は、
たいへん優れものです。
と申しますのも、
釉薬を塗らずに、
達磨窯で焼いてくださる
五十嵐さんの瓦は、
スポンジのように水を吸い込みます。
この作用が、
瓦と野地板の隙間の湿度を
自ら調節してくれるのです。
さらには
水を吸うということは、
いずれはその水を吐きます。
その際に気化熱が奪われますので、
水を通さない今の一般的な瓦と比べると、
夏場に関しては、温度の変化が緩やかだといえます。
温熱環境のことだけではありません。
瓦のこうした作用によって、
野地板がいつまでも元気な状態でいてくれるので、
かえって屋根は長持ちするそうです。
緩やかに受け入れること、
呼吸すること。
これが家の健康の秘訣のようですね。
あ、人間も同じだ。