できあがる空間としての家だけでなく、みんなで楽しむ家づくりの素敵な時間をたっぷり味わってほしいのです。
現代の「結(ゆい)」を
家づくりは大工という専門職が居てこそできるもの。けれど昔は、建前や壁塗り、茅葺き屋根の葺き替えなど、村人の協同作業でできることは、「結(ゆい)」という形でしていました。一緒に身体をうごかし「ありがとう」「どういたしまして」「おかげさまで」と言葉を交わし合う。「今回はうち、次はあそこ」と順繰りに、みんなで一斉に取りかかり、いっしょにご飯を食べて。家はものではなく、地域の相互扶助のはたらきの結晶だったのです。
今の家づくりでも、現代版の「結」ができるんじゃないか。それが、失われかけている人と人とのつながりを取り戻し、木や土のこと、職人さんの手仕事のことをより身近に感じるきっかけになるのでは。そんな想いで「柿渋塗り」「竹伐り」「土壁塗り」などを、誰もが参加できるワークショップとして家づくりの過程に取り込んでいます。
職人さんに教わりながら、手伝ってくれる人と一緒になって作業をし、おいしいお昼やおやつをいただく。そんな中で家は「あそこはあの人がこんな風に手をかけてくれたんだな」「あの時に足で練った土が、この壁になっている」という「物語」がたくさん詰まったものになっていきます。
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竹伐り隊
竹小舞に使う竹を、竹林から伐り出す作業です。秋〜冬の下弦の月から新月にかけて行います。
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泥こね隊
粘土、切り藁、水を足などでこねて、土壁の材料となる荒壁土をしこみます。現場で最初にする作業です。塗るまでに数ヶ月以上発酵させます。
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柿渋隊
大工が刻んだ材木に一本一本、柿渋を塗り込みます。上棟までに行います。
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竹小舞隊
土壁の下地となる竹小舞を編みます。
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土塗り隊
左官屋さんの指導の下で、泥こね隊でつくった土を、竹小舞に塗りこみます。
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その他
外壁の仕上げに使う焼き杉板を、バーナーで焼く「焼き杉隊」、石場建てや束石の礎石を据えるために、地面を搗き固める「よいとまけ」などをすることもあります。
共につくった家は、愛の結晶
家は「買うもの」でも「つくってもらうもの」でもありません。主人公はあなたで、職人や隣人たちと「共に」つくるもの。その過程を、楽しんでいただきたいのです。「楽しめば、楽しい」真の快楽が、そこにあるからです。
家族で身体を動かしたこと。職人さんに教わりながら、やってみたこと。ひとつひとつが大事な思い出となります。家は、みんなの「愛の結晶」。だからこそ、家への愛着も一層わいて、ずっと大切にできるのではないでしょうか。はじめましょう、「楽しむ、楽しい、家づくり」!