旅情を催す
今年度第4回目の木の建築塾は、
泉幸甫さんが講師でした。
お題は、
「工業化と手作りの狭間で」。
手作りはいい。
時間と手をかけて
丹念に作ったものは、
写真で見ても
そうつぶやいてしまうのですが、
資本主義経済が確立し、
存分に時間(=おカネ)をかけるわけにも
いかなくなったこの現代は
「手」を離れて工業化が進み、
設計とはカタログの中から
工業製品を選ぶこと、
といっても時代になりました。
職人が設計者を揶揄する言葉として
「カタログ屋」と呼ぶという話も
聞いたことがあります。
工業製品は
決して美しくないわけでは
ないと思うのですが、
手作りのものが放つ
本能に響くような美しさには
とうていかないません。
そんな中で美しさを表現したい
私たちのような者たちにとって
どのような態度で臨むべきか、
その答えのいくつかを
泉さんは示されていました。
とくに私が刺激を受けたのは、
素材に対する情熱と行動力です。
素材を取り扱う手段が
「手」から「電気仕掛け」に変わろうと、
料理でも
おいしい料理を作るためには
素材のよさが大事なように、
建築でも素材の吟味が
大事なことになってきます。
泉さんは建築に使う
素材と出会うために
あるいは素材の源流を探るために
好奇心旺盛に世界中を旅し、
見聞を広げられていて、
そういえば最近
自分は目の前のことを
楽しむばかりで、
旅してないなあ、
旅したいなあ、という
思いを募らせたのでした。
やはり別の世界に触れることは
刺激になります。
その意味で「木の建築塾」は、
本当に自分の糧になることを
改めて感じました。