壁塗り進行中
竹小舞下地の部分は
貫が見えなくなり、
木ずりだった壁には
中塗土が塗り込まれ、
次第に壁が壁らしく
なってきました。
上棟前、木組みに塗った
柿渋の斑を補修するため、
茅ヶ崎あ邸の現場に行きました。
初夏の暑い陽気でしたが、
土壁で覆われた家の中は、
涼しい海風が流れ、
爽やかな心地でした。
熱い夏家の中を涼しくするためには、
熱を遮る土壁だけではなく、
風の流れも大切ですね。
と申しますのも土壁の家は、
夏涼しいという評価がありますが、
外気の温度変化に対して
家の中をやわらかく包んでくれる一方、
じっくり時間をかけて
熱を蓄えてしまうという
性質もあります。
だから、
涼しい風が流れる朝と夜に風を取り入れ、
また熱い空気を外に逃がす
仕掛けが必要なのです。
この家では、
その仕掛けの一つとして、
寝室の二間分ある収納を石場立て風とし、
その下に地窓を設けました。
こうすることで防犯に配慮しつつ、
朝夜二間分の風を
部屋に取り入れることができます。
またこの部屋の南面にある
大きな掃き出し窓には、
鍵付き無双窓付きの
木戸が閉まるようにしました。
石場立て、地窓、無双窓…、
いずれも昔ながらの家に仕掛けられた
装置の応用ですね。
現在、茅ヶ崎あ邸は、
瓦葺きの最中。
屋根の上に、
斑な銀色の波が、
描かれ始めています。
ところで、
瓦の軒先の様子を
写真に納めました。
ご覧のとおり、
瓦の下も空気が
流れるようになっており、
また万が一、
瓦の下に水が
流れてしまったとしても、
外へ流れ出るしくみに
なっています。
しかも瓦自体が
昔ながらの燻し瓦、
水を吸ったり吐いたり、
呼吸をするいきものなので、
外見をととのえるだけではなく、
こうした下地部分の環境、
いわば建物の内臓をも
ととのえてくれます。
こうして
昔ながらの匠の技は、
知れば知るほど、
風土に根付いた表情を
与えてくれるだけではなく、
気候風土に対して
理に適った機能を
持ち合わせていることが
多いことに気が付きます。
あるいは
昔ながらの建物は、
デザインの一つ一つに
意味があると
言えるのかもしれません。
現代でも、
こうした技と知の結晶を
生かしていきたいですね。