丸柱
桧の丸い柱。
丸いだけに、
影が柔らかいですね。
ここで会うたび、
抱きつきたい
衝動にかられます。
この前少し、
石場立ての話が出ました。
石場立てとは、
昔ながらの家に見られる
基礎の構法の一つで、
石の上に柱を載せ、
それを足固めや貫で
固めるという方法です。
え、柱を載っけるだけ?
とお思いの方も
いらっしゃるかもしれませんが、
家の床下の通気を存分に確保し、
足元の手入れがしやすく、
また地震が来た時、
地面からの揺れを吸収してくれるので、
ある意味では理に適った
構法といえます。
しかし今の時代、
法律でこの構法を
全面的に取り入れることは
極めて難しくなりました。
とはいえ私はときに、
この構法を部分的に
取り入れています。
例えば先日の話のように、
収納を宙に持ち上げて、
その下を地窓にしたり、
あるいは玄関で
靴箱を宙に浮かせて
靴箱の下の空間を使えるようにしたり、
いずれも何かを
「宙に浮かせる」場合に使います。
上棟前、木組みに塗った
柿渋の斑を補修するため、
茅ヶ崎あ邸の現場に行きました。
初夏の暑い陽気でしたが、
土壁で覆われた家の中は、
涼しい海風が流れ、
爽やかな心地でした。
熱い夏家の中を涼しくするためには、
熱を遮る土壁だけではなく、
風の流れも大切ですね。
と申しますのも土壁の家は、
夏涼しいという評価がありますが、
外気の温度変化に対して
家の中をやわらかく包んでくれる一方、
じっくり時間をかけて
熱を蓄えてしまうという
性質もあります。
だから、
涼しい風が流れる朝と夜に風を取り入れ、
また熱い空気を外に逃がす
仕掛けが必要なのです。
この家では、
その仕掛けの一つとして、
寝室の二間分ある収納を石場立て風とし、
その下に地窓を設けました。
こうすることで防犯に配慮しつつ、
朝夜二間分の風を
部屋に取り入れることができます。
またこの部屋の南面にある
大きな掃き出し窓には、
鍵付き無双窓付きの
木戸が閉まるようにしました。
石場立て、地窓、無双窓…、
いずれも昔ながらの家に仕掛けられた
装置の応用ですね。