緑の幕
引き続きKさんの家。
階段を上がる途中に、舞良戸付きの地窓があります。
外側には嵌めゴロシの硝子、
さらにその外側にはスギの縦格子。
Kさんの家の中で、自分が気に入っている空間の一つです。
この前行ったら、縦格子に緑の幕がかかっていました。
苦瓜です。
外からの視線を遮り、防犯面でも有効。
しかもこの暑い季節、風にたなびく緑は、私たちに涼しい感覚を与えます。
緑と手入れは身の回りを心地よくしてくれる、よい例です。
先週土曜日の朝、久しぶりにK邸を訪れました。
K邸も、冬を越え、春を越え、夏を越え、今に至っているわけですが、しばらく見ない間に、緑がとても豊かになっていました。
しかも、食べられる緑!
東京のど真ん中でも、決して広い敷地ではなくても、こうして緑を豊かにし、食べ物を育てることができるのだと、改めてKさんに気づかされました。
そしてやはり緑は美しい。
焼杉色ともよく合います。
そういえば昨晩、焼杉板で仕上げるコーポラティブハウスに住まう予定のKSさんが、電話口でしきりに建物を緑で覆いたいと仰っておりました。
ぜひそうしましょう!
今週から左官屋の湯田さんのところの職人が4人入るようになり、竹小舞かきもだいぶ進んできました。
現在建物は、「竹籠」状態です。
夕方、作業用の照明を建物の中で点けていると、建物全体が竹であしらった巨大な照明器具のようです。
視線は遮るが風と光は通す細かい竹の格子、こうしてできるたび、この状態をどこか一部に残しておきたいと思ってしまいます。
建て主のNさんも、壁の一部を指差して冗談交じりにそのようなことを仰っておりました。
そうです、指を差した先は外の壁です。
しかし、古い民家を見てみると、竹小舞を一部残した小窓をたまに見受けます。
昔の人たちも、「やっぱりここは風と光を通すか」とか言って、せっかくだから竹小舞の部分を残したいと思ったのかな。
Nさん、本気でやってみます?
今週も相変わらず湯田さんが一人で竹小舞かき。
ちゃくちゃくと進んでおります。
去年、I邸で自主施工した際にそのたいへんさを実感しているので、一人でここまでたどり着く姿を見ると、やはりさすがだと思います。
竹小舞が取り付けられ、割った竹が格子状に組まれた姿は実に美しく、また気持ちよい風がそよそよと通り、願わくばこのままとっておきたいと思うほどです。
屋根は野地板が貼り終わり、そのうえに防水紙が貼り終わった状態です。
野地板を下から見上げたところ。
基本的には天井を貼らないので、これが「化粧」となります。
防水紙は、不織布によるもの(商品名:ルーフラミテクト)で、共和建材の五十嵐さんに教えていただきました。
これですと、野地板の通気を確保しつつ、防水することができます。
アスファルトを使っていないというだけでも、ホッとします。
状況を確認するために、屋根に登りました。
周りには遮るものが何もなく、風が身体を突き抜けます。
夕陽も美しい。
夕陽は、夏の終わりの表情でした。
気持ちよいので、しばらく棟のところで佇んでしまいました。
N邸上棟後、現場に板を広げて上棟のお祝い。
藤間建築工房のこれまでの仕事をねぎらうとともに、これから工事に携わる職方たちも集まり、今後の工事の安全を祈願しました。
Nさん、立派な祝いの場を設けていただきまして、ありがとうございました。
祝いが終わった今、祭りが終わった淋しさを感じつつ、様々な感慨が頭をよぎります。
K邸のKさんご夫婦や柿渋塗りで多大なる協力をいただいたS藤さんが見学に来ていただきました。
I邸(ピスカリア)の棟梁の後藤さんと現場で再会することができました。
方々から集まってくれた大工同士、大工技術について議論を交わしていました。
吉岡木材さんからは、「この家では木がよろこんでいる」と、うれしい言葉をいただきました。
Nさんからは、「こうした伝統構法による家づくりをぜひ続けてもらいたい」と、勇気付けられる言葉をいただきました。
こうした感動的な時間は、建て主さんのご尽力はもちろんとして、大工の技術と誇りを結集した伝統的な家の作り方によるところも大きいと感じます。
すばらしい建築技術と職人集団の継承のために、建て主さんたちの満足のために、森や木のために、そして自分自身の使命として、今日集まっていただいた面々により、私たちの住む地域の周辺で、こうした家づくりを一つ一つ、着実に継続していきたいという思いをいっそう強くしました。
今日はN邸の建て方作業2日目。
コンシャン、コンシャンと、相変わらず心地よい槌音が、まちじゅうに響きます。
(シャン、というのは、こだまとして帰って来る音です。)
今日はいいお天気。
‘いい’を通り越して、太陽が暑い!
かけやも息を合わせて5人で同時に。
そういえば、はたからみるとかけや(大きな槌)を大工さんたちは気持ちよさそうに振っているように見えますが、実際に持つとけっこう重いのです。
今回藤間さんが最も苦労したところであり、そして藤間さんの凄味を感じる仕口の写真集。
普通はこうした部分は天井に隠れてしまうのですが、今回下から見上げたときに全て‘化粧’となるので、金物に頼らず、木組みで接合しました。
しかしこの上には間もなく野地板を貼るので、上から見た写真はこれで見納めです。
このままとっておきたいと思うほど、‘六叉路’が見事に決まりました。
上棟に向けて、最後の一撃。
上棟直後、喜ぶ藤間建築工房の面々。
約半年の苦労が実った瞬間です。
この日があるから、がんばれるのです。
夕方5時過ぎ、垂木も入れ終わったところで、幣串を立て、藤間建築工房ときらくなたてものやで記念写真。
感無量。
最後に、集まってくれた11名の大工、手伝いに来てくれた板金屋の鈴木さんと設備屋の川村さん、遠くから見学に来てくれた方々、そしてNさんご一家、皆様おつかれさまでした。
今日はついにN邸の建て方作業。
少し曇りがちと、外で作業するには絶好の日和。
また、伝統構法ばかりを手がける大工が11名集結したので、順調に組み上がっていきました。
今日は小屋梁の一部まで。
明日も作業を行います。
建て方作業は、最初が難関。
通し貫を通しつつ、通し柱に差し込みつつ、胴差を管柱に差し込んでいきます。
通し柱を土台に落としているところ。
7寸角の列柱。
かけやで叩き込んで、胴差を管柱に落としこみます。
4人で叩くかけやの躍動感のある槌音が、まちじゅうに響き渡ります。
2階床梁の様子。
尺五寸間隔で甲乙梁が入る梁が並んだ光景は、律動感があります。
伝統構法による建て方作業は、音楽のようです。
先ほどの床梁に、甲乙梁がかかった様子。
雇い車知栓の二段重ね。
下段の雇い車知栓は、藤間さん考案によるものですが、一般的なものよりも作業性がとてもよいとともに、強度もありそうです。
午後の休憩時には、1階の様子が分かる状態と成りました。
これらの構造体が、貫以外は基本的に全て見えることとなります。
夕刻、小屋梁を入れている様子。
何人かでかけやを使う場合、基本的には息を合わせ、同時に叩く必要があります。
その時響くかけやの「合唱」が気持ちよい。