ブログ
2006年3月30日

ピスカリアの小さな‘壺’

カテゴリー: ピスカリア


ピスカリアの玄関を入って右手に階段の上り口に、写真のとおり小さな壺が壁に掛かっている。
これは左官屋の湯田さんの仕事。
お店の壁の仕上げと同じ、土佐漆喰で作っていただいた。
素材といい、容姿といい、湯田さんのセンスがここに凝縮されている。
壁と同じ素材なので、こうして壁に掛けるとよく合うし、空間がしまる。

今日は、朝は湯田さんの子どものように笑い合う一面、そして夜はこうして現場で近寄りがたいほど真剣な眼差しでコテを握る姿を髣髴とさせる仕事を見た。

湯田さん、平成17年度厚生労働大臣の名工受章者(卓越技能者)である。

2006年3月27日

ピスカリアついに出現!

カテゴリー: ピスカリア


今日はついにシチリア料理店「ピスカリア」が開店!
今までこの建物を育ててきた身として、やっぱり初日には行きたいではないですか。
一通り仕事を片付け、夜足早に葉山へ駆けつける。
行き慣れた道をたどると、見慣れた工事現場の光景はそこにはなく、紛れもなく「店」がそこにある。

店に入って客席を見渡すと、お客さんで賑わっているではないか。
何だか自分のことのようにうれしい。
おっ、いちばん奥には隣のH後さん一家が。
遠慮なくご一緒させてもらい、H後さんとともに楽しいひと時を過ごすことができた。

こうして開店初日にH後さんと出会ったのは偶然ではなく、この場所ははじめから、家づくりの過程も含めて、人と人とを結びつける磁力を持つ土地。それは持ち主であるIさんの磁力でもあるのであろう。
その磁力が今後じわじわと広がっていくことを期待!

おっと磁力が強すぎて、気がついたら2時間半もここに居てしまった。

ところで食事のほどは?
説明無用。
一度来ていただいて、空間とともにぜひゆっくりとご堪能ください。

2006年3月17日

五・七・十

カテゴリー: ピスカリア


五・七・十は、I邸の構造材の秘密。

I邸の構造材の材種は、スギとクリのみ。
そして、「幸せ柱」の尺三寸角以外、断面形状は、
・五寸角(スギ・クリ)
・七寸角(スギ・クリ)
・尺×7寸の平角(スギ)
の三種類のみである。
今度そんな目で、I邸の構造体を眺めてください。

設計作業も中盤に差しかかった頃、材木屋からこの提案があったとき正直頭を抱えた。
「イタリアンレストラン」だから、伝統構法とはいえどちらかというと線を細く作りたかったからだ。
しかし「たてものや」は、こうしたお題を結果的に楽しむ要素として消化していきたいと思っている。

限られた条件の中で、いかに自分が追求する空間を作るか。
これらの条件は、材の大きさに限らず、生活上の要請であったり、予算であったりするわけだが、「たてもの」という具体物を作るために様々な条件があるのは必然のことであって、それを豊かな空間として仕立てあげることが私たち「たてものや」の使命である。

また、この材の大きさのお題の趣旨を材木屋に深く聞いたわけではないけれど、おそらく山側の事情でもあるのであろう。
たてものがいろいろな要素のうえに成立する中で、お題や条件というのは、それぞれの人間模様、経済や社会的事情が重なったうえでのものなので、大切にしたい。
そしてその条件の一つ一つが空間の個性につながっていくので、納得のいく「お題」があればあるほどこちらも仕事が楽しかったりする。

逆にこれからご縁をいただく皆さん、自分から皆さんには、家や木を取り巻く社会的事情と自分の仕事の姿勢として、「伝統的手法」、「国産材」、「直営方式」といった「お題」をお願いすることになりますので、一つよろしくお願いいたします。

2006年3月12日

幸せ柱

カテゴリー: ピスカリア


今日はI邸の竣工祝いパーティー。
I邸の工事に関わった職人さんたちや、作業のお手伝いに来ていただいた方々が約30人集まり、盛大に行われた。

Iさん、開店準備に忙しいさなか、美味しい食事のご用意をありがとうございます。

ご参加いただいた方々にそれぞれお言葉をいただいたが、この現場に誇りと愛着を持ち、楽しみながら関わっていただいたことがひしひしと伝わってきてうれしかった。
自分もこの現場は本当に楽しかった。
人と人との関わりが本気であることが、こんなにも楽しく、幸せなことであるということを肌で感じることができた。
そりゃお互い本気だからいろいろなことがあったけれど、そうしたことも含めて楽しむことができた。

Iさんのお母さんが、お祝いの言葉を色紙に書いてきてくれた。
それを大工の後藤さんが読んでくれた。
それによると、尺3寸角のクリの大黒柱は「幸せ柱」。
この「幸せ柱」を軸として、様々な幸せな関係が生まれた。
この現場での全てのできごとを中心で静かに見守ってきた、まさに幸せの「木の主」だった。

この間、ボクたちはこの建物を大事に育ててきた。
今日はこの建物の「成人式」だ。
今日のお祝いで、この建物は幸せに育ったことを確信した。
そして1週間と見ないうちに急に色っぽく、大人びたような気がして、よい意味で少し戸惑ったりもした。

いずれにしても、今日がこの建物の「成人」としての出発点。
イタリアンレストラン「piscaria」が成功しますように。

「幸せ柱」があるから、きっと大丈夫だ。

2006年3月7日

開き直る構造 その1

カテゴリー: ピスカリア


最初で最後といってよい、客席ががらんどうの状態。
しばしその状態を堪能した。
野太い柱、野太い梁は、空間のゴツさよりも、空間の安心感と安定感を与えてくれるような気がした。
開き直る構造。だからだろうか。

ところで、この建物に使われる構造材には隠された秘密がある。
その話は後日改めて。

2006年3月6日

工事現場からイエへ

カテゴリー: ピスカリア


I邸で置く予定のテーブルと椅子を並べる。
テーブルはクリの板。
椅子は籐と鉄。

Iさんと大工の後藤さんと私でテーブルを囲んで座る。
考えてみれば、現場にこうしてゆっくり椅子に座る時間は初めてではないだろうか。

工事現場からイエへ。
この場所にくつろぎの時間空間が訪れつつある。

2006年3月3日

残りわずか

カテゴリー: ピスカリア


写真は、お店で使う予定のテーブル。
床材で使ったクリの厚板を転用して作った。

それ以外でもIさんは、自分の丸鋸など大工道具を購入して、時間を見つけてはせっせと収納用の家具を作ったりした。

そのため、この建築現場は、驚くほど残材が少ない。
いくら伝統構法の現場はゴミがとても少ないからといって、ここまではならない。

この現象はIさんの機転によるところが大きいけれど、材を使い回し、ホネの髄まで無駄なく使うことができるというのは、伝統構法の特徴だ。

それでも余ったらしばらく置いておいて後で使ってもよいし、あるいは薪にして燃料にすればよい。

それもこれも知恵次第。
知恵が満載だから、伝統構法は面白いのです。

輪廻転生

カテゴリー: ピスカリア


先ほどの記事のように、失われる生命もあれば、再び生きる生命もある。
写真は、葉山にある桜花園という、古材などを扱う店で買ってきた建具。
訳あって建具を取り付けたい場所ができたのだが、時間もお金も残り少ない中で、古建具を取り付けることになった。

それにしても昔の建具は芸が細かい。
見れば見るほど感心するばかりだ。
そしてこれが2万円しないとは…

桜花園さん、N邸に引き続きお世話になります。
こうして家の中に一つでも、昔のものが入るのはいいものです。

※桜花園HP
http://members.jcom.home.ne.jp/okaen/indexf.html

2006年2月25日

ガラス屋の世界

カテゴリー: ピスカリア


今日は朝から夕方までI邸の現場に居て、細々と作業をした。
今日は大工、アイアン屋、ガラス屋、設備屋が現場に入り、また最後は板金屋とエアコン屋が顔を出して、竣工直前ならではの慌しくも賑やかな雰囲気だった。

ガラス屋の須藤さん。
今日はお互い「待ち」の時間が多かったので、ガラスの切り方、コーキングをうまく打つための道具、ガラスの種類についてなど、仕事の話をいろいろ聞くことができた。
それぞれ「プロ」の世界があるんだなあ、と改めて感心した。

…昼過ぎになり、玄関ドアが取り付けられてガラスを入れ、コーキング作業にとりかかる。
ガラスをはめ込むのは数十分。
しかしコーキング作業に2〜3時間要していた。
その大半は養生作業。
90cm×2mの建具だけど、養生の長さはなんと30m以上にもなる。
しかも養生テープをきれいに貼るのはとても根気のいる作業なのである。
養生テープをようやく貼り終わった後、「腰が…」と言っていたが、納得!の作業である。

ところで須藤さんは、大東文化大学ラグビー部がとても強かった時代のスクラムハーフで、当時高校ラガーマンで大学ラグビーの試合をテレビや生でよく観戦していた私としては雲の上の人のような存在である。
とはいえイカつい印象ではなく、とても柔らかい、物腰の低い方で、まさか「あの須藤さん」とは、話をするまで気がつかなかった。

2006年2月23日

まちが作る家

カテゴリー: ピスカリア


南側にバルコン兼パーゴラを取り付ける工事の様子。

敷地に余裕がないため、隣接するH後さんのお庭を全面的にお借りして作業。
音もバリバリ立てているのに。
いや本当にありがとうございます。

このお庭は、休憩時間にも休憩場所として使わせてもらっています。

お庭だけではありません。
駐車場に、職人たちや私の車も、快く停めさせていただいております。

さらに3軒先のK峰さんのところにも、車を停めさせていただいております。

H後さんやK峰さんに限らず、近所の皆さん、毎日のように現場の様子を気にかけてくださっています。
お友達のように、話しかけてくれます。
「まだやっとんのか〜」という感じでしょうが(笑)。
皆さん、完成したらおいしいごはんを召し上がりに来てください。

家づくりを通じて、こうして建主、職人、設計者、近所の人たちが顔の見える気持ちよい関係作りにつながっていくのは、うれしいですね。

この家は、このまちの皆さんとともにあります。

(…なんだか、市議会議員の街頭演説みたいだな。)