2011年11月11日
キッチンを設計するうえで
食器洗浄機の話題が上がることは少なくなく、
それを取り付けた方は、
今まで半々といったところでしょうか。
家事を軽減することになりますし、
ご希望があればもちろん
設置を検討させていただいておりますが、
しかしこの設備が「エコです」
という評価については、
私の頭が古いのか、
ちょっと首をかしげてしまうのです。
以前CASBEEという、
いわば建築の環境性能の通信簿のような
しくみの講習会に参加した際、
評価項目の中に「節水」があって、
食器洗浄機を設置していれば、
得点が上がるようになっていました。
あれそうなのか、
と思って、
家に帰ってインターネットで
調べてみると、
検索して真っ先に出てくるページでは、
水だけではなくエネルギーも、
手洗いより食器洗浄機のほうが
有利とのこと。
水道光熱費の比較においても、
圧倒的に食器洗浄機のほうが
有利に計算されていました。
そのデータを読み解いていくと、
まず手洗いの場合の
設定条件に驚いたのですが、
1回につき使う水の量が、
60〜70リットルとなっていて、
またお湯を使う前提です。
実際そんなに使うのかな、と思って、
おとといのお昼すぎ、
朝(4人食分)と昼(1人食分)の
延べ5人食分の食器を洗う際に
使った水の量を計ってみたら、
概ね20リットルという結果でした。
またこの時期寒くなってきたとはいえ、
まだお湯を使わなくても十分いけます。
仮にこの倍の
40リットルの水を使ったとしてもです、
水道光熱費を比較すると、
それでもまだ手洗いのほうが
明らかに有利です。
ただ確かに、
お湯を使うことにしたら、
同量のお湯を使った場合、
ガスの使用料が加算されるので、
食器洗浄機のほうが
有利になりますけどね。
しかしどうでしょう。
食器洗いにお湯を使わなくちゃ
手が凍え死ぬ、といった季節は、
半年も見ておけば、
十分ではないでしょうか。
先ほど申したとおり、
食器洗浄機の存在自体は否定しませんし、
ご希望ならばどうぞ付けましょう、
と対応させていただくのですが、
環境性能の視点で
食器洗浄機が歓迎され、
手洗いが否定されることには、
以上の計測値からみても
違和感を覚えます。
しかも手洗いの場合、
仮に百歩譲って
使うエネルギーが
現状で多かったとしても、
これまでのお湯お水の
使い方を反省し、
少しでも環境性能を高める
工夫の余地を秘めています。
水を少なめに使おうとしたら、
先ほどの20リットルよりも少なくて
済むかもしれません。
洗剤も、
使われている素材の
環境負荷を考慮して選べる幅が広いし、
洗剤を使わなくたって
いいことすらあります。
あるいは、
鍋料理だったり、
油分の少ない食生活だったら、
洗いものがもっと楽になることから、
食生活・食習慣にも
工夫が生まれます。
しかもその工夫は、
概して身体にもよさそうです。
手仕事は工夫の母、
という見方は、
私の個人的な価値観なのかもしれませんが、
しかし少なくとも、
環境性能の通信簿の中で、
手仕事よりも機械を勧めることについては、
どうなんでしょう。
産業界に都合のよい視点で
「環境」が評価されているような気がするのは、
私だけでしょうか。
「ワタシ、洗いもの手が荒れるからキライ」とか、
「ワタシ、洗ってる時間があまりないの」
と言って食器洗浄機を付けるほうが
私にとっては圧倒的に説得力があります。