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2016年11月16日

「見せる」電線

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

土間の照明器具は、
元々あった器具のデザインに近い
黒いマリンランプにしました。

そして器具への配線は、

元々Fケーブルが際を這い、
化粧モールをかぶせていたのですが、

改修を機に、
碍子引きにしました。

天井裏がなく、
かといって木を掘り込むわけにもいかず、

どうせ配線が見えるのだったら、
目立たないようにする、というよりも、
かえって配線を「見せる」
この碍子引きが好きです。

まだ電気などなかった時代に
建てられたたてものは、

その後目の前に電気がやってきて
後から電気を配線しなければならないという時に、
この碍子がよく使われていましたが、

今はほとんど
見かけなくなりました。

現代では、
電気配線の量と種類が
昔と比べて格段に増えたため、
碍子引きが難しくなった
という事情もあります。

しかし新築の場合でさえも、
電気配線が複雑でなければ、
(実は今ここが難しい)

デザインとして積極的に
取り入れたいとすら
思っています。

「隠れる」よりも、
「見える」ほうが
なんとなく安心感がありますしね。

ちなみに照明器具の台座は、
大工が用意したクリの板です。

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2016年11月1日

薄雲のかかった満月のような

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

厨房の壁に貼るための
敷瓦の中に、

薄雲のかかった
満月の月のような、

美しい円の模様のものが
混ざっていました。

達磨窯で瓦を焼くと、
窯の中での火の当たり具合で

様々な偶然の模様が
出てくるわけですが、

これは偶然にしては
あまりにも美しい円なので、

壁に貼らずに
とっておくことにしました。

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2016年10月31日

究極の飾りもの

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

今日は現場で
ちょっとした会合がありまして、

床の養生を剝がしたばかりの奥座敷で、
大勢で座卓を囲みました。

遠目にその様子を見たのですが、
なんだか昭和に戻ったような
懐かしい雰囲気を感じました。

さてその座敷には
床の間があり、

今日の会合のために
しつらえられていました。

そして床の間の真ん中に
鎮座していたのは、

解体途中に出てきた、
空襲で焼けた
黒焦げの柱でした。

空襲で焼けても、
当時の人たちがまだ使えると思って
改修して使い続けてきたわけですが、

まさかこういうかたちで
日の目を見ることになるとは、
当時の人たちも
予想ができなかったことでしょう。

それにしても、
この家の歴史を物語り、

そして引き続き

古くなっても
この家の歴史を
新たに作っていこうという
強い意思を

訪問者へ端的に伝える象徴として
究極の飾りものでした。

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2016年10月28日

美しい理由

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

現在23時過ぎ。

この時間でも、
トーキョーのど真ん中で

タイル屋の小澤さんが
まだ敷瓦貼りを
がんばっています。

自分が把握するかぎり、
晩ごはんも食べていません。

たぶんお昼ごはんも
まともに食べていません。

モーレツサラリーマンも
顔負けの仕事ぶり。

物静かに見える小澤さんですが、
かつては高校野球超名門高校のエース、

内に秘めた闘志を
垣間見たような気がします。

さて、先ほどから
ずーーと目地を撫でていますが、

目地が乾くまで
目地を整えています。

なかなか目地が乾かないので、
途切れずやり続けるしか
ないようようです。

はた目に見た感じでは、
もうそれでいいんじゃないと
思ってしまうのですが、

しかし小澤さんは、
納得のいくまで
手を動かし続けます。

だからですね。

1枚1枚表情もかたちも違う、
達磨窯で焼いた敷瓦が

面になると、
はっとするほど
美しく見えるのは。

瓦の背景にある物語、
またその美しい物語から
紡ぎ出される瓦そのものの
美しさだけではなく、

それを貼る人の手も、
十分に影響しているのだと
思います。

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花に波立つ

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

玄関の欄間戸に、

花柄を描いたガラスの前に
‘小さな波’が立ちました。

玄関の建具は閉じていても、

南北に通風できるように
取り付けた建具の金具です。

看板建築の再興が
この小さな波から始まり、
大きなうねりになると
うれしいです。

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2016年10月26日

玄関が新しく戻る

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

今日は玄関の建具が入りました。

今回の建具の意匠は、

昔の写真を参考にして、
如何に90年前当初の状態を再現するか、

そして単なる過去の再現ではなく、
そうした条件の中で
如何に今を表現するか、

そんなことを考えながら、
この現場に赴くたびに
どんな建具がいいか思い描き、

そして建主さんとも
話し合いを重ねましたが、

なかなか結論には至らず、
ようやくつい最近
たどり着いた結果の成果が
今日取り付きました。

そんな紆余曲折があっただけに、
今日という日が本当に感慨深いです。

建主さんも
すごく喜んでくれました。

ところでこれまで
この現場で何をしていても、
道行く人たちは
現場に目を向けることが
あまりなかったのですが、

玄関の建具を
建て込んでいる時は別、

道行く人たちのほとんどが
こちらに関心のまなざしで
目を向けていました。

木の建具は、
人々の関心を惹く
引力があるようです。

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まっさきにエアブロ

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

今日はお風呂に
高野槙で作られた
風呂桶が入りました。

岐東の直井さんが、
今朝が岐阜から
直々に届けてくれました。

風呂桶を所定の場所に据えたあと、
まっさきに恒例の
「エアブロ(笑)」しました。

高野槙の香りが
これと分かると、

うんと離れた玄関の土間でも
高野槙の香りが
微かにしました。

香りを言葉で表現するのは
とても難しいのですが、

一つ言えるのは、

木の香りの中で
高野槙の香りが
いちばん好きです。

鎌倉でたびたび開いている
「湯」ですが、

ここでの「湯」も
心待ちにしています。

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きらくに陽の当たる幸せ

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

秋は日に日に
陽が短く低くなり、

そうすると、
きらくな網戸の影も

様々な幾何学模様を
楽しめるようになってきます。

神田え邸では、
南側が現在解体工事中なので
1階でも十分に陽が射すため、

楽しいきらくな網戸の影が
壁に映し出されていました。

壊した後は
新たにたてものが建つ予定なので、
陽と影を楽しめるのは
今のうちだけですが、

やはり陽が当たる幸せを感じてしまうと、
東京のど真ん中だろうとなんだろうと、
陽が当たるって大事だな、と思います。

そういう都市計画に
ならんかなあ。

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2016年10月19日

神田川とは反対の向きにありますが

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

コンクリートジャングルの中に
横格子が印象的な
バルコニーができあがりました。

このバルコニーとは
反対の向きにありますが、

ここで誰かがギター持ち込んで
「神田川」歌ってほしいです。

ところで今日は
ここで全身埃まみれになったので、
すぐにでも銭湯行きたいです(笑)。

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2016年10月11日

ここまで来ると芸術家

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

今日から左官屋の湯田さんが
作業を再開しました。

今日の作業は、
玄関の両脇の仕上げ。

湯田さんが得意とする石膏装飾に、
洗い出しで仕上げたものを
取り付けました。

看板建築として
従来にある装飾に倣って
蛇腹のデザインをこしらえ、

そして普通石膏装飾は
真っ白な仕上がりですが、

半乾きの状態で
すかさず洗い出しの仕上げを
施したようです。

あまりにも美しく作られているので、
本当に人の手で作ったものかと
目を疑いますが、

紛れもなく湯田さんの手仕事。
ここまで来ると芸術家です。

ここの看板建築は、
当時の芸術家とともに
考えたデザインとのこと。

それが湯田さんをはじめ、
大工という名の、
板金屋という名の、
タイル屋という名の、
あるいは建具屋という名の、
数々の芸術家たちによって、

約90歳の看板建築が
元気に息を吹き返そうとしています。

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この白い壁の装飾から、
デザインの要素をいただきました。