鎌倉よ邸にて。
居間と水廻りを仕切る建具は、
従来は折れ戸だったのですが、
今回の改修を機に、
より手軽に開け閉めできる
引き戸に作り替えました。
その建具の仕様は、
濡れた手で行き来することが多いので、
紙ではなく木で作ったものがいいだろうと、
舞良戸とすることにしました。
木で作る建具は、
材種や桟の割付などは
建具職人と相談しつつも
基本的には設計者の意図ですが、
具体的にどんな木を使うか、
つまり木配りは建具職人の
想いと感覚が強く反映されます。
そこで今回も、
建具職人新井さんが
どんな舞良戸を作ってくるか
楽しみにしていましたが、
建て込んでみて、
やはり新井さんの心にくい配慮を
感じました。
舞良戸の鏡板(横桟の奥の幅の広い板)を
よく見ていただくと、
居間から見て左側が白太がちの板、
右に行くにしたがって
赤身がちの板となっています。
この建具の左側は、
桧の壁と天板の造作が目立つ
白の強い空間、
対して右側は、
褐色に塗装された
既存の家具が座っているのですが、
新井さんはこの舞良戸が、
手前と奥だけではなく、
左と右を橋渡しする存在として
位置づけたかったのだと推測します。
直に聞いたわけではありませんが、
新井さんの木配りは、
いつもだいたいこうした意図があり、
空間を図面以上のものに
仕立ててくれます。
たてものづくりは、
とくに木のたてものは、
こうしたたくさんの職人たちの
想いや感覚を見出すことも
楽しさの一つです。