板張り前夜
鎌倉大町ほ邸にて。
構造補強を兼ねて、
張り替えることになった
東面の外壁。
ボロボロになっていた
表面の板を剥がした後、
傷んだ木組みや
枠廻りを補修し、
これからスギ板を
張っていきます。
しかし私たちの
感性の琴線を揺さぶる
竹小舞土壁の表情が
見えなくなるのは、
さみしいなあ。
鎌倉大町ほ邸にて。
この家の浴室は、
当初ハーフユニットだったのですが、
その部分の木組みが
惨憺たる状況だったので、
急きょ方針変更。
考えに考えあぐねた結果、
基礎を立ち上げて、
木の浴槽を入れることになりました。
なぜ木の浴室が、
構造補強になるの?
と思うかもしれませんが、
この部分は、
建物を持ち上げて基礎を作り、
土台を差し替えるという作業が
たいへん困難を極めると判断し、
既存の木組みの中に、
もう一つのしっかりした構造体を作って、
それに既存の木組みを抱かせ、
なおかつ鉛直荷重の支持を
真下で確保し直す、
という方法を取りました。
フタを開けて
既存の木組みを見た時は、
大工ともども
たいへん重い心持ちになりましたが、
結果的に木の浴室になって、
建主さんに喜んでいただけるのでは
ないでしょうか。
鎌倉大町ほ邸にて。
2階の床に
サワラの板を貼る作業が
始まりました。
剥がしたり、
取り除いたり、
が続いていた家で、
初めての、
‘仕上げ’の作業です。
元々の下地が
真っ平らというわけではないので、
くさびで高さ調整をして
下地を作り直したうえで、
板を貼っていきます。
鎌倉大町ほ邸にて。
現在床と壁と天井を剥がしながら、
作業を進めています。
初期の段階は、
割と状態のよい下地が
お目見えしたのですが、
後半になるにつれ、
傷んでいる箇所が
目立つようになりました。
そのたびに、
大工や基礎屋さんたちなどと
現場で打ち合わせして、
どのように対応するか検討。
状況に応じて、
応用力が求められます。
そんなわけで
現場が始まって以来、
7割の日数は
ここに来ているでしょうか。
まさに走りながら、
ものごとを決めていきます。
しかし古民家の改修では、
これはつきものの作業。
むしろ、
こうして現場との密度が
濃くなればなるほど、
愛着が沸いてきます。
少しでもこの建物が
長生きできますように。
古民家を改修している
鎌倉大町ほ邸にて。
天井解体。
すると実にしなやかに
曲がりくねった梁が
見えてきました。
屋根の下地のトントンの表情も
私は大好きです。
これを活かさない手は
ありません。
こうした古民家で
天井や壁を剥がした時の
様子を見るのは、
様々な意味で
緊張感とともに、
高揚するものがあります。
こうして
美しい肢体に出会うこともあれば、
ウワー、ということも
あったりしますが(苦笑)。
その「ウワー」は
ともかくとして、
下地を剥がす時は、
人間と同じ、
ヌード写真を見るような
感覚に近いものがあります。
しかしそう考えると、
私たちが手掛けている
木組みと土壁の建築は、
「裸」の建築。
如何に美しい裸を作るか、
それが私たちのめざすところ、
ということになります。